愛人[AI-REN]

ものすごく難しい作品ですが、自分的に満足度は高いです。

 今回レビューするのは一巻の内容だけです。
非常にむずかしい内容ですし、全てを読まないと何の意味もないので一巻だけの説明とします。

 さて、今回紹介するのはヤングアニマルで連載された田中ユタカ著「愛人」です。

まず、タイトルについて説明します。

「タイトルの愛人(あいれん)というのは、中国語で夫や妻などの配偶者の事をいう言葉です。
なぜ中国語なのかというと、いろいろ言い訳はあるものの、「ダーリン」とか「アムール」、あるいは「つれあい」ではいまいちピンと来ない。
それに、愛人(あいれん)という語感がとても優しくとても美しい。

日本語読みだと愛人(あいじん)になって何かしらネガティブなニュアンスを持ってくるのですが、それもまた物語内の設定からするとピッタリする。

ムリヤリに「人ヲ愛スル」と読めなくもない」(「あとがき」より)

つまりこの「愛人」は「愛する人」のことなのです。



 時は未来、人は生殖能力を失って久しい。
その為人類自体の寿命が見えてきてしまっている。
 主人公のヨシズミイクルはそんな時代に生きている。

 愛人―終末期の患者の精神的な救済を目的とした擬似的な配偶者、
     恋人のような役割を果たす人造遺伝子人間。 

 イクルはその愛人を市に要請し、その要請はすんなり通った。
イクルは「終末期の患者」なのだ。

 イクルは生まれて間もないとき事故で体の半分を失った。普通では助からないその状況で
「何者か」に「体の半分」を「移植」され、再生し生き延びた。
しかし、「体の半分」はイクルではなく「他者」であり、融合したわけではなく
イクルはもうまもなく「他者」によって殺されてしまう身なのだ。

 「あい」となずけた愛人はまるで幼子のようで、イクルは慰めてもらうどころか逆に世話をしなくては
ならなかった。しかし、そのあいとの共同生活により、イクルは日々に楽しさを見つけ始める。

 しかし愛人の再生時間(命)は十ヶ月しかない。終末期の患者を慰めるのに長い月日は必要ないから。
あいは十ヶ月したら死んでしまう。

 しかし、あいはイクルにとってかけがいのない「愛人」になってしまっている。

 そんな、死と生と愛の物語――「愛人」








 もともと作者の田中ユタカ氏の作品をしっていて結構好きでした。

そんななか、何となく手にとった「愛人」。

内容はすごく深くて、すごい難しくて、すごい考えさせられて、すごい感動しました。

性欲がほとんどない世界で生きる二人の物語。

一巻ではほぼ三人しか人が出てきません。

イクルという名前は「生」とかきます。

どこまでも純粋でまっすぐなあい。

そして、イクルを導く先生のハルカ。

ハルカは二人を導く役目ですから、実際はイクルとあいだけの物語。

死ってやっぱりむずかしいな、なんて事を考える一冊。






すでにもう全五巻で完結しています。

あいはどうなるのか。

イクルはなにを選択し、どう生きるのか。

ハルカはイクルをどう見届けるのか。

全てはもうすでに描かれています。





もしあなたがこの作品をよむのなら

ぜひ一巻からよんでください。

何度も読み返してください。

この物語があなたにとって面白い物かどうかは判りませんが

一つの考えとしてあなたの心のどこかに残ると思います。






僕は正直いえばこの物語は意外でした。

もしかしたらなんの意味もなかったのではないか、なんて考えたりもしました。

でもやっぱり「こうなるんだな」って納得しています。







 可愛いあいの小さな一生を読んでください。

 

俺的総合評価 自分でも良くわかっていません
あい可愛い度 ★★★★★ かわいいです。まじで。
テーマ ★★★★★ 深く考えていいテーマです。
納得度 ★★★★☆ ハッピーエンドって結構難しい。
お勧め度 ★★★★★ ぜひ一人で読んでください。

一言
レヴューじゃなくてですみません。
次はお笑いを……

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