Sound-Rider

Voice-Stage「本番です!」

舞台音響(プラン/オペレート/録音)

ポスター

公式Twitter

スタッフ、出演者はHPを参照ください。
主催:アミューズ
脚本:吉井三奈子
演出:大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
会場:恵比寿エコー劇場
<出演>
小倉久寛
麻生かほ里
牧野由依
太田将熙

資料

仕込み図 回線図

概要

 以前お世話になった方からの紹介で参加することになった公演です。アミューズさんが(頭をひねりにひねって)作ったブランド、ボイステージと銘打っての公演です。
 今回の作品は、とある小さなアフレコスタジオに集まったちょっと売れてない役者たちが、新人ディレクターの無茶振りに応えていく、というアフレコ現場を描くコメディ作品です。脚本は吉井三奈子さん、演出はヨーロッパ企画の大歳さんです。
 舞台の構成は役者さんがアフレコ台本を読むという形で、小作品を朗読していきます。内容は最初が韓国ドラマっぽい恋愛映画、旅番組、野球の実況、任侠もの、そしてドキュメンタリー風の素敵なドラマをアフレコの形で読んでいきます。最後の作品は台本を手放し、本人として一つの家族を演じ、最後は3人が歌と演奏を披露します。最後は本当に素敵な時間が流れるいい脚本でした。
音響的には、アフレコスタジオ芝居ということで、収録エンジニアもやっている僕としては楽しいかつ、きつい作品でした。打ち合わせの段階ではハンドマイクでもいいよ的なことを言われましたが、僕としては絶対に許せない!ということで、ラージダイヤフラムのマイクを揃えました(笑)。オーディオドラマ部分あり(冒頭の恋愛ドラマは暗転しながら録音した音源を流した)、歌あり、ギター&電子ピアノの演奏あり、そして、本番録音ありという、今の僕がやっていること全部やるような作品になりました。これは気合いを入れざるをえない!、頑張って挑みました。

ざっくり解説

サウンドプラン

 今回はアフレコスタジオのワンスチュエーションコメディで、実際にマイクを立てて、客席側に画面があるような形で、役者さんは客席に向かって芝居をします。
 アフレコスタジオで、アフレコをする芝居をするので、お客さんにはオフマイク(バウンダリー)で生声を届けつつ、オンマイクの声は朗読劇とは違う、映画の音のようなクリアさを目指しチューニングしました。ラージダイヤフラムのコンデンサーマイクでの収音で、実際のアフレコ経験も多い役者さんが出す声を拾うと、朗読劇とは違う「声」が届けられたかなと思います。
 最後の小作品では、結婚式での親からのプレゼントで歌を3人が歌う、というシーンがあり、それについてはワイヤレスマイクで歌とギターの音を拾っています。また、牧野さんが電子ピアノを弾き、そのためのモニターなども準備しています。
 上記した通り、生声とアフレコの声との対比が一つの目標でした。ですので、この規模ではあまりやりませんでしたが、インフィルからもしっかりマイクの音を出しました。もちろん、生声も聞こえるのですが、舞台上での芝居の声とアフレコで収音した声をちゃんと切り分け、PAされた声を前列のお客さんも含めて多くの方に届けられるようにプランしました。イメージとしては、オーディオドラマをリアルタイムに作り、ミックスした音を届ける感じですね。
 ラストを除いて、基本的にBGMはすべて映像のBGMとして流れます。本来であればスタジオの中では音がしません。(映画の吹き替えなどではヘッドフォンをしたりします)ですが、そこについては舞台ですのでもちろん流れます。
また、今回ネットで音声作品として発売するということで、MTRへ収録送りを細かく作りました。これをもとにエコーの方がミックスし、作品になっています。これはAudibleのHP,もしくはアマゾンで販売しております(ダイマ)

システムについて

◯卓周りについて
 ミキサーはYAMAHA LS9-16です。DAとしてPersons DIGIMAXを使用しています。M出しPCとして、MacbookPro13”、DAW Ableton Live10、I/Oはpersons Studio192を使っています。USB3接続の1Uのオーディオインターフェイスです。音が素晴らしく、とくにロック系をカッコよく鳴らしてくれますね。最近(2020年はいってから)サンダーボルトの廉価版がでていて、そちらも気になっています。今回は録音もしていますが、録音については別途説明します。
 お客さんから見て右側後ろの一部の席をおかりして、卓などを置きました。劇場の調整室は上手側の2階にありますが、窓がありやはり聞こえる音が変わってしまうので客席でのオペをやりたいです。(客席が減ってしまうので、制作との話し合いです)
◯アウトについて
 アウトはメインSPにCZR12を使い、劇場のSP台の上に置きました。床置きですとちょっと低かったので、本当にありがたかったです。(ちなみに、BOSEのウーハー、B1を持ち込んで台にしようと思って持ってきましたが、未使用です)
CZRは今回のような話だと本当によく合いますね。
インフィルにはStagepasを使用、ピアノモニターも同様です。今回はマイクの音を前列にもちゃんと届けるために、この劇場の大きさでinfillを置くのは珍しいですが、今回は割としっかり出しました。CZRはもともと音を広く出すSPですが、インフィルSPがはいらないかといえば全くそんなことはなく、インフィルで前列のお客さんへ送ることで満足度は変わると思います。
 奥のSPには劇場のSX300をスタンドで立てました。スタジオの芝居なので、SPが見えてることはOKとなり、また歌のモニターも兼ねることができたのでとても便利でした。
 劇場のプロセSPをお借りしています。遠近で分かれており、主に遠用の方を使用し、オフマイクの音を送っています。
◯マイク、インプットについて
 今回の作品はアフレコスタジオでのコメディですので、レコーディング用のマイクをB3を2本持ち込んでいます。 それを円形ベースのマイクスタンドにホルダーをつけて舞台上におきます。実際に接続してあり、話が収録になると実際にそれで音を拾いました。演劇の集音用にラージダイヤフラムのコンデンサーを舞台上に置いたのは初めてでしたが、拾った音がSM58やガンマイクなどとは違った、クリアな音になりました。アテレコを楽しむ作品として、TVから流れてくるような吹き替えの音が流せたので、コンデンサーを持ち込んだのは正解でした。
 オフマイクとして、PCC×3。奥のソファーに座ってのお芝居が多かったのでフォローでガンマイクを2本吊りました。奥行きがそこまであるわけではなかったのですが、やはりPCCのみで頑張るよりガンマイクでフォローできるようにしておく方がオペをするときに気が楽ですね。今回はコンデンサーマイクのフェーダーも触っていなければいけないのもあり、オフマイクは本番中はそこまで触っていません。また、生声とアフレコの音の差が大きい方が作品の面白さが増すと思い、チューニング的にも音量を稼ぐような感じではなく生声をふわっと拡散できるようなところを狙いました。
 歌用マイクはLine6XD-V70のハンドマイクを使用しています。アコスティックギターの音を拾うのもV70のハンドマイクです。最初ラベリアマイクをギターに貼り付けた形のワイヤレスも考えたのですが、演出と話し、絵としてギターのマイクを立てることにしまいた。ピアノにコーラス用のマイクでSM58が置いてあります。ピアノはヤマハのCPだったので、DIは不要でした。素敵な音でした。
◯録音について

パンフレット(私物)

録音のルーティング

 今回はアマゾンが行っているオーディオ配信サービスでの配信が決まっており、そのために録音が入りました。 回線図にかいてある「toRec」というのが、収録さんへの送りです。すべてアナログ接続しています。コンデンサーマイク、パラレル接続し、ワイヤレスマイクは本体のTRSアウトを送っています。10chでまとめるためにちょっと無理なことをしています。。具体的には、ピアノ、ギターを弾いている時間はBGMを出していないので、ST送りをMとピアノ、MONO送りをSEとギターにして録音しています。送りがポストフェーダーで、フェーダーで操作した結果を送っているので、本番中ONになっていなければ録音されません。
 また、仕込み図には書いていないのですが、バックアップで僕の方でも録音をしています。PC:MacBookPro13”(2011)、I/O:persons FireStudio,DAW:Adobe AuditionCS6。adatの2とspd/ifで接続し、1~5chはDirectOut、5~10chは収録さんへの送りのMIXとST、MONOを送り、収録送りと全く同じものを録音しています。音質は変わりますが、ちゃんとバックアップを取れるのは安心です。

感想など

 冒頭での韓国映画の吹き替えシーンは事前に収録して編集したものを流しました。5分ほどでしょうか。ここの収録は稽古場で行い、アドバイス程度ですが音響監督的なことでも参加しました。みなさん声優経験もありますし、ラジオドラマと吹き替えのバランスを調整した程度です。お芝居は素晴らしかったです。流すのもちょっとだけこだわり、声は奥SP強め、BGMはメインSPから作ってみました。本当ならセンターSPから声を出したかったのですが、さすがに舞台センターにSPは置けませんから(笑)
 以前お世話になった方からのお誘いで参加した今回の案件、結果として楽しい公演になりました。
自分が勉強したこと(録音、オーディオドラマ)、やってきたこと(お芝居)、やっていること(録音)が全て詰まった舞台になったからです。僕のようなスタッフは基本的に自分から企画を作ることはしません。こういうことができるよ、やりたいといっても必要なもの以外は舞台で出すことはありません。ですので、今回の舞台は本当に出会いものであったなと思っています。自分が持っている知識などを発揮出来るのは楽しい時間です。
 さて、そんな本公演。上記しましたがオーディオ作品としても発売しております。
本番だと5400円でしたが、オーディオですとなんと1000円!Audible会員ですとなんと無料です!
アマゾンのページにいっても書いてないですが、なんと麻生かほ里さんと牧野さんの聖歌!そして小倉さんのギター、牧野さんのピアノ&コーラス、麻生さんの歌が入っております!それだけでも価値があるのに、そこに3人による吹き替えコントまで!一体どういう流れでそうなってしまったんだ!と混乱し、最後にほろりとなれること間違い無し!島村編集のオーディオ(コント)ドラマまで流れて、たったの1000円です! 購入はこちらのページからどうぞ!(ダイマ)