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ゼロコ「SilentSenes」

舞台音響(プラン)

作・演出・出演:ゼロコ
会場:川根本町文化会館
   ムーブ町屋ムーブホール

資料

ゼロコ_仕込み図 回線図 回線図

ざっくり解説

概要

これまでも何度かご一緒しているパントマイマー、ゼロコのお二人の公演です。今回は、静岡県は川根本町と東京都の町谷での2公演です。特に川根本町は僕も初めてのホールの公演です。うれしいことに運転もできました。うれしい。。。(運転好き)
 毎回テーマを楽しむゼロコの公演。今回のテーマはサイレント。無音を楽しみます。静かにしなくてはいけないところ、無音での動き、音が鳴る動き、そして「無音」の静けさ。それをパントマイムを軸に面白おかしく表現していました。それに音響がどうかかわってくるか、というのが今回の音響の楽しいところです。うち一つの作品は、パントマイムに音(生活音)を付ける、というちょっと大変なことをしましたが、パントマイムと音での「静けさ」の表現、これがとても面白い時間が生まれました。
システムに関しては、二つの会場ですこし違いますので分けて説明します。

サウンドプランについて

パントマイムですので、基本的にセリフはありません。声を出すわけではないので演劇とはちょっと違います。ですが、パントマイムだからこそ音像に関してはすこし細かく作りました。
舞台の中でなっている音はできるだけ中で、BGMは中音+メインSPという形で作りました。ゼロコのパントマイムはセリフを使わないので、音もできるだけ演者の後ろにいてほしいなと思い、そうしました。ただ、システム的に難しいところもあるので、できる限り、ではあります(特に静岡公演はアナログミキサーでのオペだったので)
上記しましたが、一つの作品ではパントマイムの動作に音、生活音を付けるということをしました。具体的に言えば、窓を開ける→外の音が聞こえる→蛇口を開ける→水が流れる→手を洗う→蛇口を締める→冷蔵庫を開ける→洗濯機のドアを開ける→洗濯機のドアを閉める→操作音→洗濯機が動作を始める(ずっと選択の音が聞こえる)→冷蔵庫を閉める→包丁で野菜を切る→包丁でみじん切り→蛇口を開ける→水が流れる→やかんに水をためる→蛇口を閉める→やかんのふたを閉める→やかんをコンロに置く→コンロの火をつける→たまごを割る・・・・とまあ、こんな感じです。これで1/3ぐらいでしょうか。こうやって、音が重なっていく。これが日常の表現ですね。そして、料理が終わり、洗濯が終わり、窓を閉めて環境音がなくなり、最後に換気扇を切ると会場が無音になる。その中で二人がお茶を飲む。これで静けさの表現をしていました。日常の音の多さと、無音の不思議さを表現した面白い表現で、僕はこの作品が好きですね。オペは少し大変ですが、AbletonLiveのおかげで、慣れてしまえば何とかなります(演者さんは大変ですけども)。
 効果音は、既存のものも使いましたが、ないものは録音しました。特に卵を割る音と、たまごを菜箸で混ぜる音、フライパンからチャーハンをさらに移すときにしゃもじで叩く音は今回のためにうちで録りました。さすがに効果音CDなどにはありませんでした(笑)あ、あと掃除機のコードがボタンを押すと戻る音は稽古場にあった掃除機を使って録音しました。
 この作品の難しいところは、どこまで音を出すか、どの音を出さないか、というところでした。オペ的に追いつかない部分もありますし、また作品の導線として出さないほうが良い音もあります。そこについてはゼロコのお二人と話しながら模索していきました。
 また、お客さんに無音を感じてもらうために会場の方にお願いしてこの作品が始まる前に暖房を切ってもらいました。空調も弱にしてもらい、できるだけ無音に近づけてもらいました。見ている人に少しでも作品を楽しんでもらえたらうれしいですね。会場の方にも感謝いたします。

システムについて

CX500-1

静岡公演の卓周り。久々のMGです

〇卓周りについて
 静岡公演のほうは持って行ける機材の量に限りがありましたので、基本的に劇場のものをお借りしています。客席オペ用のアナログミキサー、および卓周りは持ち込みました。ミキサー:MG16/4FX、I/O:PresonusStudio192、PC:MacBookPro13インチ(2014)、DAW:AbletonLive10です。なお、今回はMオペはすべてフィジカルコントローラーのIcontrolを使用しています。MGでのフェーダー捌きより、フィジカルコントローラーでしたほうが細かく触れます。
東京公演では、オペレーターに入ってもらった方のDM1000をお借りしました。I/O:TC Studiokonekt48、Macはお借りして、ソフトは同様です。
〇アウトについて
 静岡公演では劇場のメイン、プロセ、奥のSPすべてお借りしました。奥のSPはラムサの12inchの縦長のSPでした。名前は失念しました。。。プロセはトークショーでのワイヤレスマイクを返していたぐらいです。上記しましたが、今回はアナログミキサーですので、送りはいつもよりはざっくりしてます。送りは奥SPのみ、奥SP+メイン、メインのみで分けてあります。演者の場所によって音の場所を選んでいます。基本的には奥+メイン、ちょっと奥だと奥のみといった感じです。
 東京公演でもアウトをお借りしています。ムーブホールはメインSPにNEXO PS10×2とLS400をワンオフのSP台に乗っている状態のものです。奥SPにはSX300をお借りしました。静岡公演と同じSP位置ですが、デジタルミキサーなので色々細かい調整ができてよかったです。さすがDM1000です。MG16/4の定価15倍以上。。。(苦笑)機材は適材適所が一番ですから、プランによって選ぶべきですね。

感想など

 ゼロコのお二人とは今で何回か音響を担当しているのですが、今回の作品は大好きな作品です。僕が大学自体に先生から習ったことの一つに、「無音は作るもの」があります。単純な無音はラジオドラマにおいては意味がなく、静寂を表現したいなら音を使って表現する必要があります。例えば環境音の選び方や風の効果音などを使う、など。また、環境音をずっと鳴らしておいて、静寂を表現したいシーンでは環境音をなくす。これって今回の作品の表現方法のことですよね。
 パントマイムでの日常の音の多さ、静けさの表現、素晴らしかったと思います。アート的な楽しみ方ができる、素晴らしい作品でした。この作品以外でもこの公演はどの作品もとても面白くて、ぜひ機会があれば参加。。。いやむしろまた見たいなと思いました。

おまけ

素晴らしき旅行写真 素晴らしき旅行写真 素晴らしき旅行写真 素晴らしき旅行写真

おれ・・・コロナが終わったら静岡行くんだ・・・