Sound-Rider

「7人の作曲家展 vol.4 “オトリウム”」

コンサートPA、Rec

ポスター

公式FB

スタッフ、出演者はHPを参照ください。
<作曲>
小倉美春
【Credo for soprano and string quartet】
後閑綾香
【Pianist choreograph for dance】
小林瑞季
【月光と海月 for soprano and electronics】
中村匡寿
【Metal Metaball】
濱島祐貴
【《蜜/毒》 for string quartet】
向井響
【美少女革命: Σ】
会場:トーキョーコンサーツラボ

<出演>
會田瑞樹 (Vib)
飯田智彦 (Tb)
岡﨑陽香(Sop)
田邉 皓(Cond)
仁田晶凱(Dance)
間部 令子(Fl)
若杉知怜(Vn)
<Quartet Integra>
三澤響果(1st Vn)
菊野凛太郎(2nd Vn)
山本一輝 (Va)
築地杏里(Vc)

資料

仕込み図 仕込み図 仕込み図 回線図

ざっくり解説

概要

 何回かやら・・・やっている現代音楽のコンサートのPA。今回は高田馬場にある、コンサートラボで公演された「7人の作曲家展」です。今回は向井響くん、小倉美春ちゃんも参加しての、賑やかな感じで繰り広げられました。全6曲、うち2曲でPAを担当しました。その他の曲についても録音しています。
 よーく考えたら、4年前の競楽でピアノのPAで参加して以来、毎年12月はなんだかんだ現代音楽のコンサートをしている気がしています。いいかげん僕も現代音楽の楽しみ方を感じて・・・きたのかな・・・た、多分。

サウンドプラン&録音プラン

全体図1全体図2

今回の全体図。メインSPの下にB1が置いてある(見えない)

 今回のメインミッションは、響くんと小林瑞季さんの曲でのPAです。サブミッションとして、全体の録音を担当しました。
 全6曲のうち、PAが入るのは後半の2曲。休憩を挟むとはいえ、PAされていないコンサートからPAされたコンサートに切り替わるのでボリュームのコントロールは難しいです。さらにそこに響くんの曲はノイズを多用した曲で、ローも割と出すタイプです。ちょっと困りましたが、頑張ってバランスをとったつもりです。。。大丈夫だったかな(苦笑)
 今回のホールはコンサーツラボで、割とドライな空間でした。残響もあまりなく、客席数もマックス70人程度です。今回はコロナ禍ということもあり、作曲家、スタッフを含めても40人程度しかいない空間です。ですので、最大音量はそこまで大きくなく、メインSPもCZR10+BOSE B1にしました。本音を言えばb1は4つにしたかったのですが、もう車がいっぱいいっぱいで積めませんでした(笑)。モニターもそこまで大きな音を出すわけではないので、うちにあるStagepas(8")とCBR10です。とはいえ、モニターとしては十分な音が出てくれています。
○PAについて
 響君の曲は、フルートがメイン、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノ、そしてPCからバックトラックを再生します。去年のチェンバロの時もそうでしたが、PCからのバックトラックはノイズ系のサウンドで、かなり強めに出すことになります。それに伴って、フルートも大きめに出しました。少しショートリバーブを足してバックトラックと合わせてあります。特にストリングスについては固めの音で拾っているので、ロングリバーブをかけて合わせています。ピアノの音はペンシルでホールを狙って拾っています。今回は重奏ですので、いつもよりPANを広げてセンター定位を空けました。バックトラックはStudiokonnect48&Live10で再生しています。
 全体の音量は最初はすこし小さめでしたが最終的にはちょいとしたライブぐらいでていました。これでいいのか、と思いましたが、去年の染田さんのライブはもっと大きかったのでよしとしました(笑)
小林さんの曲はPCとソプラノの曲です。ソプラノは譜面台の上あたりからbeta87で狙いました。小さく語りなどが入るので、マイクで拾う必要がありました。さすがの発声で、語りからなにからきっちり拾うことができました。素晴らしい。リバーブはHALLリバーブ(1.8s)、イニシャルディレイを80msecぐらい開けて、元の声を生かしつつウェットな感じにしました。バックトラックの再生は上記の響君と同じPCです。
○録音について
 今回は録音も頼まれていたので、録音専用のマイクも立っています。
 前半の4人の曲については、PAをするわけではないので、オンマイクで拾う形では集音していません。ですが、各ソリスト用にB3をショートスタンドで2本準備して集音しました。これだけでもかなり近くの良い音を拾うことができました。
 また、アンビエンスマイクとして、AuditoTecnicaのAT8015を2本、お客さんの後ろあたりから狙いました。箱型でそこまで距離があるわけではなかったので、マイクスタンドで一番高くできるところぐらいから狙っています。
 後半のPAを入れる曲については各マイクをマルチ録音しています。また、それとは別に収録さんにその日のうちに渡すようにミックスを作って送りました。具体的には録音用のソロマイクとアンビエンスをまとめ、コンプをかけてある程度大きくしておきました。今回はカメラに直接送るのではなく、録音したものをデーターで渡す形でしたので、+4dbuにはこだわらず、適度な感じでミックスしてあります。
 

システムについて

卓周り

卓周り。
仲良くオペしてます(笑

○卓周り
卓は今回もM32Rを使用しています。また、ステージボックスとしてMAIDAS DL153をお借りしました。 M32のプリアンプに比べて、深みがある音になりますね。大きな音で流すと奥行きを感じます。今回使っているCZRが面で飛んでくるSPですので、相性がいい感じがします。M32RもVer4からインプットパッチが自由になりかなり使いやすくなりました。今までは32chが8ch×4のブロックとして扱われ、その8chを本体1~8,9~16、ステージボックス1~8。。。。の中かから選ぶ必要がありました。それが今は自由になったので、かなり使いやすくなりましたね。音は相変わらず素晴らしいです。
○SP
 今回は上記の通り、CZR10+B1の組み合わせをメインに据えました。CZR10はCZRシリーズの中では一番小さいですが、他のCZR同様、低音から高音まで綺麗に出てくれる、面で飛んでくるイメージのSPですね。横方向の広がり方も広く、良い感じに鳴ってくれます。BOSE B1はいつも使っている小型のウーハーです。今回ぐらいの小さい空間では良い感じに低音をお客さんに届けてくれます。サイドモニターとしてもCBR10、フットモニターとして8インチのStagePasを使いまいました。良い音で出てくれます。後、軽い(重要)アンプはPLX1202とGX3です。ちょっと今回の小さい小屋だとファンノイズがすこし気になりましたが、いい音で鳴ってくれました。そろそろ8インチは更新したいんですが、なかなか商品が出てくれません。CXR8(DXR8のパッシブ)とかどうですか、YAMAHAさん?(笑
○MIC/PC
C2

ISOMAX2C。間違えて裏向きです(笑

b3

B3×2。ケーブル繋がっていないのは、この写真がバラシの時に撮ったから

 まずメインPA用のマイクから。フルートにNTー5、ピアノにNT5×2、バイオリン、ビオラにはISOMAX 2Cを装着しました。特にフルートはラージダイヤフラムやMD441などとも迷ったのですが、見た目がスマートの方が良いかなと思いペンシルにしてみました。ISOMAX 2Cは、元々持っていたラベリアマイクです。2本あったのでお揃いで使えるのはちょうど良いし、低感度ではありますが、音は硬めで良い感じですので使ってもらいました。装着はJTS CX500に付属していたゴム製のクリップ(500HG1)を使用しました。ピアノはNT5をステレオにして、ホール付近を狙いました。
 ソプラノの方のマイクにはSHURE Beta87Aを使ってもらいました。本来PAすることはあまりないと思うんですが、少し離れて譜面台の上あたりから狙い、ばっちり集音出来ました。さすがの発声です。  バックトラックはPC:MacBookPro2014(15")、I/O:TC Studiokonnect48ableton DAW:ableton Live10で再生しました。現代音楽のPC再生によく使っているStudiokkonect48です。今回も活躍してもらいました。また、ボリューム操作などにnanoKONTROL 2を接続しています。手元で操作できるのはやっぱり便利です。
 REC用のマイクとして、StudioProjectのB3を2個、ショートスタンドにつけて狙いました。楽器の構成によって、場所を変えて、なんとな〜く狙いました。また、客席後ろのアンビエンスマイクとしてAT8015を2本、ステレオで狙いました。エントリーモデルのショットガンマイクですが、全長がながく全体の空間を拾ってくれるので重宝してます。
○REC
AU画面

AuditonのRec画面。一番下が映像用ミックス。

 録音はM32RとPCで行っています。もともとM32RのオプションカードでLIVEカードというものがあり、それを装着するとUSB2.0でPCに接続しつつSDメモリーカードでのマルチトラック録音ができるようになります。USBでの接続したPCとSDメモリーカードでの2重録音も可能です。さらに本体にもUSBメモリー接続での2ch録音ができます。つまり今回はPC,本体1(SDメモリーカード)、本体2(USBメモリー)の3重録音です。
詳しく説明するとPC、SDメモリーカードでは16ch録音をしています。SDメモリーカードにはWave24bit48khz16chファイルで録音しています。4GBごとにファイルが分かれるので、15分ぐらいで1ファイルになっており、それを専用のソフト(Utool)でモノラルファイルに変換することができます。PCの方は、AdobeAuditionCS6で録音しています。この二つの送りは同じですので、2重化するようになってるということですね。結果としてAuditonで問題なく録音することができました。
 USBメモリーには16bit48khz2chのwavファイルで録音することができます。今回はPAしない曲もあるので専用のミックスを作り、それを録音しています。具体的にはアンビエンスマイク+B3をミックスしました。PAする曲はアンビエンス+メインSPのミックスです。またこのミックスをPC,SDメモリーカードの方にも送り、バックアップとして録音しています。
 実際、どれかでエラーが起きることはなくないので、録音している側としては3重で録音できるのはかなり安心です。

○感想など

 なんだかんだ呼んでもらってる現代音楽のコンサート。聴き方は未だによくわかっていませんが(笑) なんとなく音量やミックスについても見えてきまして、スムーズにできたかな〜なんて思っています。  現代音楽でもPAで届ける音自体に違いはなく、各楽器をお客さんに届けられれば良いと思っています。そのためのアプローチは変わらず、また録音も同様であくまで楽器の音をきっちり拾うことが重要かなと。。あえて言うのであればあまり色付けすることなく綺麗に、という感じでしょうか。  ライブはあくまで体験が重要です。その空間で広がる体験。現代音楽も同じ範囲にある音楽の芸術体験。それのお手伝いがうまくできていたら最高です。