Sound-Rider

「小倉美春コンサートシリーズ~
「ピアノのために書く」とは~vol.2
ハインツ・ホリガー『パルティータ』をめぐって」

コンサートPA/録音

William Blank (1957-) :Lightnings (2014)
Christoph Delz (1950-1993) :Sils Op.1 (1975)
Michel Jarrell (1958-) :…mais les images restent… (2003)
J. S. Bach (1685-1750) :Partita 4 BWV 828
Miharu Ogura (1996-):新作初演
Heinz Holliger (1939-) :Partita for piano (1999)
会場:ToKyoコンサーツラボ 

資料

仕込み図

ざっくり解説

概要

 東京都の早稲田にありますコンサーツラボ。先々週以来です。今回は小倉美春ちゃんのピアノコンサートのPA。これまた2年ぶりです。前回はシュトックハウゼン作マントラという全70分強、2台ピアノ、PAもゴリゴリの大作でしたが、今回はシンプルなピアノ曲のコンサート。楽しい時間になるといいな、と思いながら当日を迎えました。え?今回の曲の内容ですか?まあ。。。えっと。。。現代音楽とかわからないんで。。。あれ、なんだろう。。。お腹が。。あれ。。。。
 なお、今回もサウンドプラン&チューニングに横山斉美さんのお力をお借りしております。ありがとうございます。

サウンドプラン&レコーディングプラン

全体図

今回のピアノ
お世話になります

今回はピアノのソロコンサートです。内部奏法や、本体を叩くなどはありますが、ピアノ一つでの勝負です。小屋はトーキョーコンサーツラボ。前回の7人の作曲家展でもお邪魔しました、箱型で残響はあまりありません。ですので、基本的には大きくPAするというよりは、部屋鳴りがあまりしないのでホールっぽくリバーブをかけ、それをお客さんが自然に聴けるようにプランしました。また、前回のシュトックハウゼンのメモを元に、お客さんの後ろにもSPを置いて、リバーブ音や内部奏法の小さい音を後ろからも出してみました。前からだけでも良いのですが、できるだけ「スピーカーから出てるな感」を感じて欲しくないので音の出所を散らす感じですね。といってもスピーカーの前にいるお客様からすればどうしようもないのですが(苦笑)
 横山さんのセッティングのおかげもあり、ピアノの音がしっかり聴こえつつ、ホールにいるような響きができたと思っています。また内部奏法時などにちょっとフェーダーを上げてあげるとPAしてる感もして、不思議な感じがとれたのではないでしょうか。詳しくは後述しますが、弦の音を拾っているDPA4099の方だけ後ろのSPからすこしこぼし、フェーダーをあげると音像が後ろに引っ張られるようにミックスしています。
 録音については、各マイクをマルチで録音しつつ、アンビエンスマイクも追加しました。映像さんへ送るミックスは表の音とは別のものを作りました。
 また、今回はローの響きをとるためにラージダイヤフラムを立ててみました。ライブで聴いている時はそこまで気にならないのですが、いざミックスする時になるとロー成分が欲しくなります。EQで上げるのではなく、ローの響きを足せるといいなぁとおもって録音してみました。この記事を書いてる段階ではまだミックスまで行きついていないので、ミックスしたら追記します。

システムについて

全体図

前後SP
前のSPはペッコリ7°

全体図

卓周り
汚くてすみません

○SP
 メインスピーカーはCZR12を使いました。ヤマハのスピーカーで、面で飛んでくるイメージですね。今回のようなSPからの音がメインではないセッティングの時には特に使いやすく感じます。全体的にふわっと出てくれます。スタンドで立てて、7°ぺこりと前に屈んでいます。元々SPに穴が二つあり、角度つけられるのです。すこし高めにして、後ろの列のお客さんに向けて音を出せるといい感じです。客席後ろのSPは同じシリーズのCZR10をスタンド立てしています。こちらは直接音を届ける必要がないので0°でまっすぐ立てています。同じシリーズなので、音がぶつかるとかの心配がなくて安心です。アンプはPX-5を2台使用し、メインSPには「CZR12 FOH」のプリセットを使用しました。
○ミキサー
 ミキサーはは前回と同じ、M32Rを使用しました。ステージボックスとしてDL 153を使用してます。LAN接続便利。最近ピアノのコンサートをやる時はお借りしています。ほんと、きれいに音が出てくれるミキサーです。フェーダーの出来を気にしなければ、X32 +DL153でもほぼ同じ音を再現できるというのは、コスパどうこうではなく、かなり良い選択肢ではないでしょうか。QL1+RIOの1/3の値段でこの音が手に入ってしまうなんて、恐ろしい。。。(苦笑

○マイク
 マイクは今回は横山さんからDPA 4099とNEUMANN KM184をお借りしました。すごーい。(語彙力)
 4099は弦を弾くのも含めて打鍵を狙い、KM 184ではホールから出た音も含めて上から狙っています。また、SPには出していませんが、ローの響きを録音するためにStudioProject B3を演者の逆側から狙って立てています。またアンビエンスマイクとしてAuditoTechnica AT8015を2本、客席後ろにステレオで立てています。

全体図全体。
ピアノとマイクとSPが一直線 全体図マイキング

○セッティング
 まずはピアノの位置を決めてもらい、そこに反射板を設置しました。この段階でも反射音がうまく散ってくれて音の響きが良くなりました。そこに、SPを設置します。今回は壁の反射音をできるだけなくしたいので、壁からもできる限り離して設置しました。壁が近いと、直接音より反射音が強くなってしまうので、今回のプランとは離れてしまいます(演劇などで見た目優先の場合は諦めています)。ピアノとマイクとスピーカーが横並びになっているので、音の出方はかなり自然になったのではないかなと思います。
 会場のコンサーツラボは箱型で、小屋鳴りはあまりありません。ですので、ドライな空間に響きを足して、ピアノがホールで響くようなイメージの音を出せるようにセッティングしていきます。
 元々CZR 12自体がフラットな特性のSPですが、さらに磨くようなチューニングをしてもらいました。スピーカーのセッティングのおかげもあり、ピアノの響きが自然と聞こえたのではないでしょうか。リバーブについては、1.9sぐらいで、ふわっとかけてあります。客席後ろのSPからもリバーブをこぼしているので、自然かつちょっとだけリアルじゃない部分も出せたかなと思います。(補足すると、アタックが強い瞬間にリバーブの音像だけがちょっとだけ後ろにいったりするので、すこし不思議な空間になります)。内部奏法のタイミングでは40人程度しかいない空間とはいえ、聞こえにくいのでこちらでフォローしました。
 今回、KM184といういいペンシルマイクをお借りすることができたので、ピアノの音はKM184をメインに出してあります。4099はドライでアタックの強い音を拾うことができたので、KM 184に足して打鍵のアタックがうまく出せたかなと思います。KM184は普通に前のSPから出ていますが、ピアノの内部においてあるDPA4099の音は後ろのSPにすこしこぼしています。通常の演奏時のペンシルメインのバランスでは後ろから聞こえることはないのですが、内部奏法の際に4099の音を手元のフェーダーであげた時に後ろのSPからも溢れて聞こえるようなミックスです。
 また、後半の一曲に、ピアノの内部奏法や叩くなど、ピアノを弾く以外音を組み合わせた曲がありました。その際には4099をあげ、またリバーブもすこし多めにしました。現代音楽聴き慣れている人には普通なのかもしれませんが、せっかくPAしているのですから「PAしてる感」をだしてみようかなと。うまく行ったんでしょうか(現代音楽全然わからない勢)

アンビエンスマイク客席後ろのマイク。
広めのステレオ。

録音については、M32RにUSBでPCに接続し、Adobe Auditionで録音しました。
 各マイクに加え、ローの響きを録音するためにStudioProject B3を立てています。また、アンビエンスマイクとしてAT8015をステレオで立てました。SPからの響きもうまいこと拾えるとライブ感が増してくれるかなーと期待します。
録音については、前回の「7人の作曲家展」と同様にDAW(マルチ録音)、本体SD(マルチ録音)、本体USB(ステレオ録音)の3重録音しています。これが後日、私を救いました。。。(後述)


感想など

 現代音楽のコンサートを初めて4年。。。思えば最初も美春ちゃんのピアノでしたっけ。今回はバッハの曲など、ピアノ作曲の話を聴きながらのコンサートでした。また、このコンサートの後日に別のピアニスト兼音響さんにお話をしてもらい、作曲の歴史などを交えながら解説してもらって、ピアノの作曲と演奏についてすこしだけ理解して・・・すみません、なんでもないです。
 今回も楽しいコンサートでした。コロナ禍でもありお客さんも来にくい状況でしたが、そんな中一つのコンサートを開けたのは、本当によかったと思っています。その手伝いをできたのは光栄です。

おまけ(だけど重要)

M32R、X32シリーズもそうですが、USBメモリーにステレオ録音することができます。今回もその機能にお世話になっていました。ステレオファイルで描き出せるので、FOHミックス+アンビエンスマイクをRecMixとして別に作り、録音していました。で、それを映像さんにそのまま当日にお渡ししたんですが。。。なんと2回音が飛んでいました。。。。幸い、映像さんが編集時に気づいてくれて連絡をしてくださり、こちらでもバックアップとしてDAWでステレオを録音していたのでなんとかなりました。

 症状としては、40分程度のファイルで、30分ぐらいのところで1秒ぐらい(テンポで言えば3カウントぐらい)、突然飛びました。
先述の通り、Liveカードを接続し、USBとSD両方でも録音していました。さすがに処理的につらかったのかもしれません。

 非常に便利な機能ではあるのですが、信じすぎはよくないですね。