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「淡海乃海ー声無き者の歌をこそ聴けー」

舞台音響(プラン)

ポスター

公式HP

スタッフ、出演者はHPを参照ください。
主催TOブックス 
原作:イスラーフィール
脚本:西瓜すいか
演出:加治幸太 (K-FARCE)
舞台監督:吉川尚志(劇団SURF SHOP)
音響:iland.va
照明:今中一成
美術:荒川真央香
大道具:S-CASE
衣装:真野真由美・GOLDEN STEPS衣装部
殺陣:泉紫太朗 (TeamAZURA)
小道具:平野雅史
演出助手:黒川一将(劇団25.6時間)
制作・票券:株式会社Thavman
プロデューサー:神田明子
企画協力:MARCOT
会場:俳優座劇場

<出演>
笹翼
横山涼
松本寛也
栗原大河
松本祐一
吉田知央
千疋隼斗
森田晋平
高岡裕貴
横田陽介
富永盛也
網代将悟
佑太
西園みすず
窪田美沙
辻村晃慶
金澤慎治
東達也
泉紫太朗

北村真一郎
史歩
誠仁
荒木吏沙
岡田千優季
太田麻衣
馬場海河
SOH
金川翔
藤村龍都
金井勝実
上玉利澄斗
沓掛龍一
栗原樹
中山佳大
樺沢大輔
杏さゆり
中村龍介
剣持直明

資料

仕込み図 回線図

ざっくり解説

概要

2020年の3月末に行われた舞台「淡海乃海」。コロナでの混乱が広がる中での公演でしたが、役者、スタッフ、主催のTOブックスの努力で最後まで公演を打つことができました。来ることができなかったお客さんも多数いらっしゃいましたが、来ていただいたお客さんからは良い拍手をいただける良い公演でした。そして、その続編を2021年の3月に行うということで、今回もプランニングで呼んでいただけることになりました。
 演出が変わり、今回はストレートプレイになりました。殺陣は「大人数のいくさ場」を表現する乱戦に、切ない死を彩る悲しい殺陣。時代が変わるその瞬間を表現するものでした。音響としてそれらをお客さんに伝えるお手伝いができたら良いなと思いプランニングしました。(出来たとは言ってない)
 今回、忙しすぎて全然写真撮っていませんでした(涙)

プランニング

 今回は俳優座です。非常に良い小屋で、今回のような時代ものをやるにはぴったりの小屋の一つではないでしょうか。
 12月に一度入っていたので、その時と同じメインSPを持ち込みました。15インチポイントソース+15インチウーハーの組み合わせで、迫力のある音を届けました。出演人数が非常に多いので、ある程度大きな音を出さないと役者のエネルギーに負けてしまいます。人数が多い演目では大きな音から小さい音のレンジを大きくしてプランする必要があると思っています。いわゆるエンタメ舞台では尚更ですね。今回も大きいけど聴きやすい音をめざしましました。
 殺陣の音の音像を下げるために袖のパネルにCBR10を床置きしました。毎回やっているのですが、やはりアクションの音が上から降ってくるのは好みではないので、今回もやってました。かなり効果があるのでおすすめです。ただ、横幅がある舞台では音が広がってしまうので、できればもう少しセンターにおきたかったですね。置き場所については美術さん次第なところがあり、今回はセンターではなく袖パネルの前におきました(美術は素晴らしかったですので文句ありません)
マイクについては表にバウンダリーを5枚とセンターにガンマイク、吊りのガンマイク3個。また、台の下で将軍やお殿様が座ってお芝居をしているので、そのフォロー用に無指向性マイクCX500を一つセットしました。無指向性ですので、ふわっと拾ってくれます。俳優座劇場ぐらいの大きさですと、無理に声を拾うというより、自然に音を拾えるようにチューニングしています。メインSPをディスタンスロッドで高さを上げているので、メインからこぼしても良い感じで拾ってくれました。
 また、主人公の元綱、そしてその転生前の「俺」にはヘッドセットのワイヤレスマイクをつけてもらっています。常に出しているわけではなく、エフェクト用ですね。特に「俺」は元綱にしか認識されておらず、ストーリーテラーでもある特別な存在、その特別感を演出できれば、と思いました。
 殺陣については、一度に5箇所で行う、どこを見ても戦ってる!という時間もありました。戦の激しさ、悲しさをよく表現した殺陣でした。が、音響的には全てに音をつけても飽和するだけですので、お客さんが見そうなところをピックアップして音をつけてもらいました。ちなみに、今回は殺陣サンプラー2人体制です。すごい。

 音については、上記の通り、大人数の殺陣に負けないような音圧を、耳にいたくないように届けつつ、戦で死んでいく悲しいシーンでは役者のささやきも耳をすませば聞こえるような自然さをめざしました。オペレーターさんのフェーダーの操作もうまくて形にしてもらいました。
 また、題名にもある通り、淡海の海、今で言う琵琶湖の音が鳴っているシーンが多いので、それもきっちり届けようと思いました。
 去年も使ったのですが、湖の音は学生の時に琵琶湖に行ったときに録音した音を使っています。そのままでは「満ち引きがある波の音」に聞こえないので、他の効果音とまぜてはいますが、それでも本物の音がちゃんと鳴っていると言うのは小さいこだわりです。
 環境音は、主に後ろに吊ってある802から出ていますが、殺陣SPからも出るようにして、音像が下がるように頑張りました。環境音ってほんと難しいです。
 そして、実際の出音については、オペレーターさんが本当に良くしてくれて、僕のやりたいこと以上の形を作ってくれました。本当に感謝です。もうプランナーでいいんじゃないかな。。。

システム

○ミキサー、卓周り
 メインミキサーにはQL1をお借りしました。ステージボックスも借りて、ステージ横にセットしてあります。ヤマハに慣れた人には非常に使いやすいミキサーですね。ステージボックスもRIOーD2で、音が良くなった。。。かな?良い意味で強い印象がなく、使いやすい感じがします。今回はSPもほぼヤマハなので、素直に音が出てくれていた感じがしています。
音出しはPresonus Studio192+MacBookPro15”、バックアップはオペレーターさんのMacBook ProをDANTEで接続しています。また、Midiキーボードをiconnect Midiでパラにして送っていました(有難いことに無事に使わずにすみました)
 今回サンプラーが2人入ってもらいました。両方とも AbletonLiveで出しています。2人は普段は役者さんで、サンプラーは専門ではありません。ですが、Liveであれば練習すれば対応できます。さらに2人はセンスも良かったのでスムーズに行きました。機材としてはPresonus Quantam 2626+MacBookPro15”、Tc StudioKonnect48+MacBookPro13”です。ソフトは前述の通り、 Ableton Live10です。11がすでに出ていますが、オーディオインターフェイスのドライバーとの兼ね合いでまだ10です。
○SP
 メインSPはDZR15+DXS15です。間にディスタンスロッドを入れて立てました。インフィルにDXR8、サイドモニターにCBR10を立てました。この辺りは、実は前回俳優座に入った時のセッティングのままです(笑)今回も良い音で鳴ってくれました。
奥のバトンに802をワイヤーで吊り、環境音などはそちらから出しています。また、殺陣音メインのSPとして、CBRをサイドのパネルの前に置いてあります。どうしても吊りのSPから音を出すと上から降ってくる感じになってしまうので、床レベルに置いて、音像を下げる役割をしています。今回はメインSPがステージの高さからさらにディスタンスロッドで上がっているので、効果としては高いと思います(ステージに近いお客さんからすると音が上から聞こえるため)。ただ、ステージ自体が高いので、横からの音にはなりません。
サービスモニター(袖などで役者が声を聞くためのスピーカー)として、Bose101を何個か準備しています。Boseの4chアンプ1200Ⅵには1chに音を送ると4chとも同じ音を送る1toAllという機能があり、それぞれ同じ音が流れています。送っている音はバウンダリー真ん中3枚とガンマイクをプリで送っています。
○マイクについて
 舞台の縁にバウンダリーマイクのTM90ーBを5枚設置してあります。吊りのマイクとしてガンマイク AT8015を3本を吊ってあります。2階部分が台形になっていて、3面ありましたので狙いもそれぞれの面を狙う形になっています。また、台下で座って話したりすることもあるので、ラベリアマイクのcx500を台の天井部分に貼り付けてあります。無指向性なので、ふわっと音を拾ってくれます。
ワイヤレスマイクはLine6 XDーV70(トランスミッター)とJTS CX500の組み合わせです。これを自作のヘッドセットにくくりつけて、こめかみのあたりにマイクがくるようにつけてもらっています。もみあげの髪から少し出るぐらいですので、カメラでズームしない限り見えません。まあ、目がいい人は見えちゃうかもしれませんが。。。( ・∇・)ソコハキニシナイデ。ちなみに、アンテナを卓の近くに置いてオペをしていましたが、ほぼ問題なく電波は届いていました。落ちてしまうこともありましたが、それはむしろ衣装の素材との兼ね合いがあることが多いです。今回主役の基綱のマイクは帯の中に入れていて、その外側に金糸の袴を履き、さらにその上にいろいろまとっていました。こうなると、どうしても電波は遮られます(涙)こうなるとアンテナがちかくてもダメなときはダメでした。。。ワイヤレスはほんと難しいです。
 情報量がおおく、セリフがきっちり聞こえないとお客さんも辛いので、いつもより大きめに拾っています。ただ、あまり大きすぎると足音が大きくなってしまうので難しいところです。実際はリアルタイムに判断していくしかなくて、オペレーターさんが非常に細かく動かしてくれました。Mも流しつつマイクまで。。。大変です。(ごめんなさい)

感想

 2回目の俳優座でのプランニングでした。前回は生楽器でしたし、演劇のプランというよりPAでしたから、演劇の音響としては今回が初めてといっても良いかもしれません。なんていうんでしょうか、良い演劇をやってきたのであろう空気を感じました。感覚的なもので、なんとも説明しにくいのですが、良い空気なんです。今回のような時代劇などには本当に合ういい小屋です。ありがとうございました。
 前回に引き続き、コロナに振り回されながらも、なんとか形になった、というのが本音です。それは演出の梶さん、役者、スタッフ、そしてお客様。皆で作った公演なんだと思います。その後また緊急事態宣言があり、コロナにかかる人も多くなっていきました。実際、この現場でもコロナにかかってしまった役者がいて、役者が交代するということもありました(判明後PCR検査を2度おこない、陰性も確認している)。これがどれだけの負担か。できるかどうかわからないままの稽古は本当に辛いのです。ですが、最後までやり切ることができました。
 演劇というものから離れている期間もあり、今はできることをしようと演劇音響も含めてやっています。この作品は僕にとってすこし特別で、終わったことがいつもより嬉しかったですね。前回も書きましたが、参加できてよかったと思っています。