Sound-Rider

「RAMPO in the DARK vol.2」

舞台音響(システムプラン)/マイクPA

ポスター

公式HP

スタッフ、出演者はHPを参照ください。
企画/制作:CCCreation
原作:江戸川乱歩
脚本・演出:野坂実
舞台監督:ブレイヴステップ
音響:竹下好幸
照明:南香織
美術:久保田悠人
大道具:C-COM
衣装:小松陽佳留
ヘアメイク:LaRME
演出助手:北川翔子
衣装協力:藤木屋 balloonbala
キャスティング協力:長谷部友美
票券:Mitt
映像収録:COLORS
宣伝美術:threeligt
WEB制作:グラムワークス
プロデューサー:宮本茶々
会場:神田明神ホール

<出演>
茜屋日海夏
明坂聡美
石谷春貴
大河元気
大原優乃
梶原岳人
神尾晋一郎
神原大地
工藤晴香
小林ゆう
小林裕介
駒田航
酒井広大

白井悠介
高橋健介
立花慎之介
田上真里奈
田丸篤志
豊永利行
鳥海浩輔
堀江瞬
矢野奨吾

資料

仕込み図 回線図

ざっくり解説

概要

神田明神

神田明神。お世話になります。

 神田明神の敷地内にあるホール「神田明神ホール」で行われた朗読劇、「RANPO IN DARK vol.2」。 江戸川乱歩作品の中から「エログロナンセンス」小説を読むという企画で、題名の通り今回は2回目です。前回は配信のみでしたが、今年はお客さんを入れるということで、僕がシステム&マイクPAで入ることになりました。演出は野坂実さん、音響チーフは竹下好幸さんです。去年もお手伝いしていたのですが、今年はお客も入れて規模が拡大したのでマイクオペでもつくことになりました。
 江戸川乱歩作品を読む朗読劇、ということですが、その語りを客席に伝えつつ、配信にもきれいに送るというのが今回のお仕事です。去年はピンマイクでしたが、今年はワイヤレスのハンドマイクで声を拾う形になりました。また、そのワイヤレスマイクも使回しを防ぐため、出演者の立ち位置分、計7本を出しました。ちなみに毎回出演者が変わるので、消毒作業は毎回きっちり行っています(アルコール除菌+UV-C光除菌)。
今回はマイクを使っての朗読ですが、300人規模の会場ですのでなんならマイク無しでも十分届く距離です。マイクで全員に音を届けるより、PAしてる感を出しすぎないようスマートに効ける音を目指してPAしました。また、立派なラインアレイが吊ってありましたので、それをうまく生かして、上から音が降ってくるイメージが強くならないようにインフィルSPからも大きめに音を出し、メインSPにディレイをかけて音像が下がるように頑張ってもらいました。
 なお作品は「断崖」「百面相役者」「お勢登場」の三本です。

システムプラン

CX500-1

今回の卓周り

 今回の作品は江戸川乱歩の作品を日替わりの役者が朗読するというもので、毎回出る人が変わる舞台です。基本的には聞きやすく、芝居に集中できるようにプランしていきました。全員がオンマイクなので声量的に心配とかは全くありませんが、作品の特性上大きな声から小さな語りまで声量の幅が大きい芝居になります。それを音割れせず、小さな声もフォローしてお客さんに届けられるように頑張ったつもりです。また、仕込み図などではわからないのですが、BGMが数多く鳴り、作品を彩っています。焦り、戸惑い、恐怖。。。数々の感情の芝居に添える現代音楽の楽曲たちが鳴っていました。それらが芝居の邪魔をすることなく、かつ声が気にならないようにチューニングをしていったつもりです。とかいたものの、実は小屋のシステムがd&bという素晴らしいメーカーで統一されていたので、基本をしっかり守ってチューニングすればよい音で鳴ってくれました。メインSPがT-10 ×3×3+Y-SuB×2、インフィル、サイドフィルにE-12 という素晴らしい構成。バランスをしっかりとって、良い音で届けられたのではないでしょうか。
 毎回出る人が変わる、という企画で、数人は2回読むことがありましたが、基本的にはその回限りでの公演で終わり、という舞台です。もちろん、舞台というメディアの特性上、見に来た方からすれば一度限りのものですし、二度と同じものがないというのはその通りですが、ここでいう一度きりというのは「モニター環境などの役者環境の調整時間があまりない」という問題を含みます。今回ちゃんと間隔をとってのお芝居のため、役者がほかの役者さんの声が聞こえないと芝居しにくくなってしまいます。舞台では一般的には「場当たり」と呼ばれる「きっかけ合わせ」などの時間があり、そこで調整されたのち「ゲネプロ」と呼ばれるリハーサルを行ってからお客さんを入れます。ただし、今回の企画の特性上、現場でのリハーサルは直前の1度きり、ということになります。ですので、役者さんとの調整の時間がほとんどないため、モニターについては気を使いました。今回の舞台だと、ステージ自体の横幅に対してアクティングエリアが狭く、サイドモニターだけだと1,2,6番に立つ役者にはあまり音が届かない、ということが発生してしまいます。しかし、仕込みの時間などを考えると吊りSPを追加するのはむずかしく、また照明さんや美術さんの邪魔になってしまいます。そこで今回はフットモニターで真ん中へのフォローをすることにしました。だた、美術が素晴らしく(ぜひツイッターの写真をみてください)できるだけ邪魔したくなかったので、最低限のスピーカー面が出るようにして、高さを下げています。
 マイクについては、劇場のワイヤレスマイクをお借りしました。Shureのホワイトスペース帯、SM58モデルで、さすがの音です。今回は、作品ごとに立ち位置が変わるのと、新型コロナウイルス感染症対策として、立ち位置ごとにマイクを使い分けるという形をとりました。。1つ目の作品が2人、次も2人、最後が3人で読むので、計7本です。そのうち、最後の作品の階段上のマイク(番号だと6番)はさすがに目立つので2話目が終わってから演出部に出してもらっています。また、1、2番に関しても、話が終わったらたたんでもらいました。
 今回一番苦労したのが、実はマイクスタンドでした。今回の美術、公式ツイッターの写真を見てもらうとわかるのですが、階段部分なども含めて鏡張りになっています。これが江戸川乱歩作品の妖艶さと非常によく合う素晴らしい美術セットなのです。もちろん僕はすぐに「ではクローム(銀メッキ)のマイクスタンドにしましょう!」と提案したかった。。。のですが。実は僕はマイクスタンドは「黒」しか持っていなかったのです。いわゆる音楽ライブではよく「クローム(色)」のスタンドを使うのですが、演劇を主にやっている僕は「黒」しか持っておらず、また劇場にもクロームはなく。。。結局追加で購入しました。結構ギリギリに到着したりして、てんわやんわでした。でも、結果として美術によく合う形になったので良かったのかな、と思っています。
 配信さん送りについては、配信チームと話して、M、SEとマイクの3回線をおくり、そこに収録チームの方のアンビエンスマイクを足してもらう形で録音してもらいました。こちらで+4dbuをトップにできるようにコンプなどで調整しつつ、BGMなどのバランスを映像用に作り、最終判断を配信さんにお任せしました。
またそれとは別に、すべての回でこちらでバックアップ録音を回しました。だた、結果としてはトラブルが起きることなく終了することができました。

システムについて

今回のSP達

今回のSP達

〇ミキサー、卓周りについて
 劇場のCL5をおかりしました。ワイヤレスについては、Danteで接続されているので、ほぼ問題なく運用ができました。相変わらずの良い音で鳴ってくれてました。
M出しの卓として、チーフの01V96iが来ています。接続はアナログです。ただ、劇場の規定で、持ち込みのカードの使用およびDante接続は禁止となっていたので、01V96iからの入力は一度マルチ回線に乗せて、舞台袖にあるRioでのパッチとなりました。CL5はXLR入力が8chで、今回使おうと思っている01v96からのアウトは10chで、足りませんでした。管理の方と話してこういう形にしようと決まりました。
〇スピーカーについて
 メインSPはd&b T-10 ×3×3+Y-SuB×2 です。ホントいい音です。ローボックスは2段つんでちょうど今回のステージの高さと同じぐらいになり、見た目としてもほぼ目立つことはありませんでした。そして、その外側にインフィルSPとしてE12をスタンド立てしています。正直このSPだけでも300人の客席を埋められるぐらいパワフルな音で鳴ってくれます。前面のお客さん向けではありますが、かなり強めに出して音像を下げるため頑張ってくれています。また、ローもかなり綺麗に鳴ってくれていて、江戸川乱歩の作品に文字通り圧を与えてくれました。
 モニターはサイドにスタンド立てしたE12をセットしてあります。インフィルと同じですが、スタンドでできるだけ高くセットしてあります。ただ今回のステージは横が広く、アクティングエリアまでかなり距離があるので、E12 だけだと不安でした。そこで、フットモニターとしてCBR10をセットしました。上記の通り、今回は階段の段差が鏡張りになっており、スピーカーがその美術の邪魔になるのは嫌でしたのでできるだけ高さを下げました。今回の客席は座りであり下から見上げる形ですので、鏡に反射はそこまで気になりませんでした。このSPのおかげでE12では聞こえにくいセンターのフォローができました。

今回のSP達

組み合わせの結果.。わかりにくいが、下だけ黒い。

〇マイクについて
 マイクは劇場のShure ULXDのハンドSM58型をお借りしました。1.2Ghz帯の素晴らしいワイヤレスで、一度も落ちることなく安定していました。音もB帯やホワイトスペース帯のマイクと遜色ない音でした。エネループでの運用で全く問題なく1週間過ぎました。ありがたいことです。
 上記の通り、3人の出演に対し、立ち位置7か所にそれぞれマイクを立てました。マイクスタンドは円形ベース+ブームが1,2、ブームスタンドが3,4、円形ベース+小型ブームが5,6,7になっています。3,4はベンチに座っての朗読なので、普通のブームスタンドで、色は黒になっています。5,6,7に関しては階段に乗せるため円形ベース、クローム色を使用しています(三脚だとサイズ的に階段に乗せることができません)。最後に、1,2で使っているのが円形ベースに通常サイズのブームを接続しています。これは、三脚ベースだと美術セットの隙間に置くことができなかったからです。(もともとは通常ブームスタンドにする予定でした)。クローム色の円形ベースは3本しか準備しておらず、円形ベースの下の部分と上の部分を魔改造合体させたものを使用しました。

感想など

 去年は配信での公演でしたが、今回はお客さんをいれての公演でした。ほかの公演でもそうですが、こういう時期に来ていただけるお客さんというのは、本当にありがたい話でして、特別なものを届けたいと思いました。役者さんがつくるその「エログロナンセンスな語り」を時にきれいに、時に妖艶に、ときに恐怖を届けられたら良いなと思います。
 さて、今回の作品、個人的に楽しかったのは「断崖」でした。女優さんによって「女」の演じ方が全然ちがい、それに押される「男」がさらに変わっていくという違いは、とても演劇的で楽しいものでした。ホントに同じ作品だっけ?とおもう回もあり、毎回楽しみでしたね。マイクオペとしても、大きな声はコンプで抑えることこそできますが、小さいところから大きな声になる差の演技はコンプでつぶしては表現としては面白くないもので、できる限り大きな幅で届けられるように気を使いました。
 マイクオペの話で言えば、もう一つ。観客側では気付かない範囲ではありますが、ナレーションとセリフで音量を変えています。ナレーションのほうが少し大きくしてあります。これは、ラジオドラマなどではナレーション時に役者さんがマイクに近づいて小さめに話し、ミキサーが音量をすこし下げるという手法があります。そうすることで、すこし近い音になり、芝居の声との差を出したりします。しかし今回はハンドマイクでそれができません。ですのでミキサーのほうでナレーションの声を大きくして差を出しました。マイクもONにすれば終わりということでなく、ちょことちょこ細かい話をしてますよ、というお話でした。