「READPIA朗読劇『風の聲 ~妖怪大戦争 外伝~』」
舞台音響(システムプラン/マイクオペ、PA)
スーパーバイザー:荒俣 宏
脚本:高橋郁子
演出:野坂 実
制作:プロダクション・エース
会場:ところざわサクラタウンジャパン
パビリオンホールA
<出演>
鈴木達央
株元英彰
日髙のり子
七海ひろき
堀尾正明
望月理恵
山下音彩
織田海誓
斉藤隼一
前堂友昭
水島 裕
山寺宏一
資料
「風の聲」昨日、全ての公演が無事に終了しました。
— 水島裕 (@goofyalice2013) July 5, 2021
お客様、キャスト、スタッフ全ての方々に感謝しています。
僕のプロデュース公演は6回目ですが、一番大変ゆえ、一番皆さんのチカラを貰いました。
今週は、「風の聲」の出演者などについてつぶやきますね。#風の聲#KADOKAWA#朗読#鈴木達央 pic.twitter.com/izCZvbBewm
「風の聲 妖怪大戦争外伝」
— 水島裕 (@goofyalice2013) July 3, 2021
皆さんのお陰で、昨日、無事に幕が開きました。
とても良質な作品になりました。
昨日、観てくださったお客様。
今日、観てくださるお客様。
皆様の心に響くと幸せです。
名残惜しいけど、想いを出し尽くします。#風の聲#声優#妖怪大戦争 pic.twitter.com/QTX3EfPWNK
解説
概要
その前の週もご一緒していた竹下好幸さんからのお仕事で、引き続き朗読劇の音響です。ラフィングライブでお世話になりました水島裕さんプロデュース。演出は野坂実さんです。
作品は妖怪大戦争をもとにしたオリジナルの朗読劇で、脚本は高橋郁子先生。生楽器と朗読でつづる舞台でした。出演者12人、マイク14本のマイクオペと生の楽器のPAがメインミッションです。楽器の演奏は今野多久郎さんと野崎めぐみさん。お二人ともパーカッションで、今野さんが主に打楽器、野崎さんがマリンバを演奏していました。
出演は言わずも知れた豪華メンバーがそろっていますが、個人的には日髙のり子さんと堀尾さんのラジオを聞いていたのでそわそわしてました。特に日高さんは若年性痴呆症のお母さん役という難しい役をその芝居で魅せてくれて、そして最後は聞いている側がその芝居とヒロイン力に圧倒されて涙する素晴らしいお芝居でした。もちろんほかの皆さんの芝居も素晴らしく、マイクオペをしている僕としては気が抜けず大変です(笑)
演奏については、今回は演出として打楽器のみで構成されていました。仕込み図にも書いてありますが、コンガ、ボンゴ、タム、ジャンベ、そのほか色々な小物を使って表現をしていました。メロディー部分はマリンバで演奏しており、これがまた切ない感じが出るんです。力強さから切なさまで素晴らしい表現でした。そんな小さい音から大きな音までをお客さんに届けなくてはいけないので、PAもかなりシビアなものになりました。本当に素晴らしい演奏だったので、何とかついていくために頑張りました。
今回の会場は東所沢駅にあるところざわサクラタウンジャパンのパビリオンホールです。東所沢は僕にとっては大学で通っていた町です(もう14年以上前の話ですが。なんだか懐かしい感じがします。それもあってちょっと気合いが入りました(笑
今回も横山さんをはじめ多くの人のお力をお借りしました。ありがとうございました。
システムプラン
今回は役者のマイクが14本(有線13本とワイヤレス1本)、パーカッション、マリンバのPAがメインです。普通の小屋だったら、マイクを集めるだけでも一苦労だったのでしょうが、なんここのサクラタウンパビリオンホール、PA用に必要な分のマイクをお借りすることができます!具体的に言えば、普通のライブぐらいであれば全く持ち込みなくてもできちゃうぐらいそろっておりました。ですので、持ち込みもほどほどで済ませることができました。
今回はほとんどを小屋の機材をお借りした形ですので、先にホール自体の説明をします。キャパはスタンディング1300人、座りで700人です。メインSPにyamahaのGEO12のラインアレイ+ウーハー、インフィルもGEO12、プロセがPS10×2(LCR)、モニター用にPS15が14台準備されています。小屋の鳴りもデッドで、設計から完全に音楽ライブ用だそうです(管理の方曰く「ジップです」とのこと)(ジップ某より音いいです(個人の感想です)
そのため、今回のような全員オンマイクの朗読だとかなり綺麗に音を届けることができます。実際2階の一番後ろのオペ卓と前のほうから7列目ぐらいの客席でそこまで大きな差を感じません(ただし、ローは気を付けないと大変なことになるそうです)。今回の朗読劇ではぴったりな空間設計なのではないかなと思ってます。パーカッション(特に太鼓、キックなど)は劇場によってはNGなのです。今回の演出では、それはもーガンガンに出しました。上品なお客様をぶっ飛ばす勢いでエネルギー出しまくってました。ですが、耳が痛いとかにはならず、お客様が受け取れるような音をスマートに出せたのは小屋とデフォルトのセッティングのおかげだと思っております。
全体としては、役者マイク、パーカッション&マリンバ のPA、PCで出すBGM、そして皆さんのモニターもですね。システム自体は小屋の機材をお借りしています。メインミキサーがCL5、M出しのミキサーとして01Vを持ち込み、Dante接続しています。バックアップの録音についてもDante接続で行いました。(収録さん送りについては後述)。SPについてはメイン、インフィル、プロセニアムは上記のものをお借りしました。
劇場のラインアレイ、とてもよいセッティングで、どこで聞いてもほぼ同じ音がしますし、インフィルとしておいてあるgeo12にもパワーがあるので、前方の客席ではそこまで上から降ってくる感はしません。モニターについてはPS15と持ち込みのCZR10、CBR10、VXL16を使用しました。仕込み時間の関係でバトンにスピーカーを吊るというのは時間的に辛いと思い、下からアダプターで角度をつけて狙う、という形をとったのですが、その際に角度アダプターをPS15に使うのはちょっと怖いなぁとおもいCZR10を持ち込みました。が、結果としてはPS15でも問題なく角度アダプターを使えました。嬉しい誤算です。VXL16は本来の使い方とは違うのですが、フットモニターとして使いました。できるだけ足元を隠したくない、という配慮からで、結果うまく行ったかなと思います。
役者さん一人ひとりにマイクを立てて、声をひろいました。出演者は12人ですが、場所の移動が2回ほどあり、移動した先にマイクが立っているということがあったので、14本になっています。また、山寺宏一さんが語りと大天狗の2役を演じており、大天狗が出てきた際に台が移動するので、山寺さんのマイクはワイヤレスになっています(ちなみに、山寺さんが立っていた台は一番高く、高さが270cmありました。恐怖!)全員がオンマイクなので、すこしは楽。。。だなんて、とんでもない!一人一人声量が違い、さらに芝居で声量の幅も変わってきます。それをいなしつつ、BGMではいる楽器のPAもこなすのはちょっと大変です。正直ひーひー言っていました(笑)もちろん全て手でやっていたのではなく、コンプで抑えつつ、役者さんがマイクからの距離を話してくれたりしつつ、手でも捌きつつ、という感じです。EQについては、小屋のセッティングに加え、横山さんのセッティングが素晴らしく58が光っていました。ですので、人によって気になったところをちょっとだけ削っただけに留めてあります。
パーカッションのPAについては、今野さんと野崎さんの演奏が素晴らしく、ほとんどを打楽器のみで構成されていて(一部鈴系楽器あり)、時にパワフル、時に繊細に演奏されていました。その演奏の幅をなんとか綺麗に拡張できるよう頑張りました。コンガ、ボンゴ、ジャンベについてはクリップでマイクを立ててアタックの強い音を拾えましたし、マリンバ に関してはトップからふわっと拾うことができました。もちろん回り込みもありましたが、演奏でもカバーしていただき、観客側に良い音で届けられたのではないでしょうか。また、タム、ジャンベについては、今回の役どころは「大太鼓」なので、すこしだけローを足しつつコンプを強めにかけて迫力を増したりしてます。今野さんの演出をうまく手伝えたとしたら幸いです。
システムについて
○ミキサー、卓周りについて
メインミキサーには劇場のCL5をお借りしました。今回は入力数がマイク14ch+パーカッション15ch+サブミキサー10ch+がなり2ch(プラスFX)、出力数18+収録送り6でしたが、まだまだ余裕がありました。さすがの貫禄です。また、劇場のデフォルトとしてLake LM44が入っています。さすがです。RIO3216がミキサー横にセットしてあり、舞台袖との接続はアナログになっています。トラブルの少なそうな構成です。さすがです。しかもRio-D2です。さすがです。(この辺にしておきます)
CL5は16+8+8+2の34フェーダーのミキサーですが、今回は全部使うことはありませんでした。DCAでパーカッションをまとめつつ、カスタムフェーダーで使うものを表に出しています。パーカッションとマリンバ でそれぞれDCAを組み、バックで流れる時は小さくしたり、ラスト前のバトルシーンでは煽れるようにまとめました。また、そのバトルシーンで全員での呪文の際に全体をさげつつ、天狗の声だけは大きくできるように天狗以外のマイクはDCAを通しています。
エフェクトについては、マイク全部にかけるリバーブ(OP,ラストの呪文用)、風子用のリバーブ+ディレイ、楽器用リバーブ(Short,Long)の計4個を準備しました。とくに風子用のディレイは最後のシーンで印象的になるように長めに調整しました。
M出しのミキサーとしてプランナーのyamaha 01V96iを使用しています。Danteカードを挿して、CL5とDanteで接続しています。大きなSPシステムなので、デジタル接続できることで、S/Nがよくなった。。。かな?ぐらいです。01Vの場合、カードを使わないと10ch送ることができないので、手軽にOutを遅れたのはいろいろ楽で、そちらの方がメリットが大きいですね。(せっかく買ったDanteカードを使ってみたかったってのもあります)
収録さんへの送りもやっていたのですが、万が一のために、Dante接続したPCでバックアップ録音をしています。各マイクのDirectOut、それとは別にメインスピーカーのアウトを録音しました。いわゆる同録というものです。マイクはHAの後を録音しているので、フェーダー操作を噛みません。できるだけミスはなくしたいですが、起きてしまうものなのでバックアップでの録音という形です。
○SPについて
上記の通り、アウトについては小屋のものをお借りしています。メインSPはヤマハのラインアレイSP、GEO S12×9(3パラ運用)+LS18(吊)+RS18(床下)という構成でした。チューナーで入った横山さんと相談し、LS18については切ってもらいました。下のLS18で十分音が出ていたのと、打楽器メインの運用のため上からの低音を少なくしたいという目的です。元のセッティングはかなりロック寄りのドンシャリでしたが、チューニングをかなり綺麗にやっていただいてフラットな朗読劇の空間にして頂きました。元の小屋のセッティングもLM44で行われていて、それを触らせていただけたので本当に良い空間になりました。
インフィルもGEO S12がセットされています。吊りSPと同じSPですので、そのまま出すだけで音像がさがり前列の客席によい音を届けることができました。やはり同じSPがインフィルにあると言うのはかなり有利ですね。朗読の様なそこまで大きい音を出さないステージだと尚更かもしれません。プロセSPも使っていますが、声をすこし返したぐらいです。
役者さんへのモニターについて。全員の足元に設置しても良かったのですが、さすがに人数が多いのと、180×180の高台に乗って芝居するのでできるだけ場所を取りたくないのでやめました。今回主に3列+一番上の高台の人向け、という構成にしています。前列の3人に関してはフットモニターとしてCBR10を2つおきました。袖中にはCZR10をスタンド立てして真ん中の2列に向けています。フットモニターもかなり大きな音が出せるので、中抜けも防げています。仕込み図を見るとわかりますが、マリンバ 演奏者にも当たってしまうため、高さは一番高くしてあります。一番後ろの台向けにはPS15をチルトアダプター(角度をつけるアダプタ)をつけて一番高い台へのモニターにしました。また、真ん中の列のフォローも兼ねています。本来ですと一番高台には専用モニターを置きたかったのですが、台が移動してしまうので配線的に難しく、やめておきました。2番目高い台二つにかんしてはVLX16を自作の台で角度をつけて置いてあります。どうしても中抜けしてしまうとおもい置いてみました。大きな音が出るわけではありませんが、1人分のモニターとしては十分な音量がでて良いモニターになったと思います。見た目も小さく、なかなか面白い形になったのかなと思います。楽器演奏者についてのモニターはAM12をそれぞれセットしています。
○マイクについて
一番高い台の上にセットされたマイクは小屋のワイヤレスマイクでゼンハイザーのWS帯です。ホワイトスペース帯ですので、ほぼ心配なく運用できました。一応、故障時用にもう一本ワイヤレスをスタンバイしていましたが、使うことなくおわりました。ゼンハイザーのマイクはしっかりローがある環境でこそ生きる感じがしますね。今回も山寺さんの声をしっかり拾ってくれました。 楽器のマイクについて。ボンゴ、コンガにはE904をそれぞれクリップでつけました。ジャンベとフロアタムにはATM230をそれぞれスタンドとクリップで狙っています。トップはKM184をステレオでセット。シンバルと、タンバリン状の打楽器などを持って叩く時に拾っています。また、それとは別に小物台をNT5で狙っています。主にウィンドチャイムや鈴系の繊細な音をオンで拾える様にしています。マリンバ にはトップからKM184をセットしました。また、小物狙い、鈴などを狙うためにNT5をセットしています。これも小さな音をしっかり拾える様にしています。今回の風子が現れる時の風の音を鈴で表現しているので、そこはフェーダーでもピックアップし印象を強めています。図面だとわかりにくいのですが、ジャンベは二人とも叩いており、マイクも邪魔にならない様にセットされています。
基本的に音がそのまま大きくなる様なミックスを目指しました。EQもそこまでいじっていません。フロアタムだけはローをブーストしつつ、コンプで潰しています。これは上記の通り、大太鼓としての圧を印象付けたいという狙いがあります。水島さんの要望により、最終的にはかなりの大音量でお送りすることになり、とくに天狗の登場シーンについてはちょいとしたロックコンサート並みのパワフルな演奏と音になりました。小屋の素晴らしいセットにより、聞いてて辛くはなく、それでもエネルギーを感じる素晴らしい演奏になりました。エフェクトについては上記の通り、リバーブをロングとショートで準備しました。小物などには長めのrevが多くかかる様に、他の楽器より多めに送っています。最後の手紙を読むシーンでは切ないマリンバの演奏をお手伝いできる様、リバーブも頑張りました。
○収録送り、録音について
今回は収録チームの方に音声さんがいらっしゃったので、こちらからはMicのまとめ、楽器のまとめ、M,SEまとめを送りました。リバーブなどについては編集時に別に付けていただきました。またそれとは別に各マイクをパラで録音してあります。バックアップ録音の方はDanteで接続したMacBookPro13"(2020)、AdobeAuditionで録音しています。
感想
ということで、ちょっと規模が大きい朗読劇でした。こんな時期でしたがなんとか終わって、一安心しています。脚本も演奏も芝居も素晴らしいものでした。PAとして、その素晴らしいものをきてくれたお客さんになんとか届けようと頑張りました。生楽器ということもあり、ギリギリまで試行錯誤しながらの公演でしたが、皆さんのご協力もあり本当に良いものになったと思います。本当にありがとうございました。
毎日「ここを右に曲がれば大学だよなぁ」という信号を通過し、しばらくいった先にある会場での朗読劇でした。ひさびさの「ヒガトコ」(ぼくらはそう呼んでました)はたのしかったですね。いやーあのころもっと真面目にやってたら良い人生だったのかもしれませんが、だらだらやってきたおかげでこんなお仕事ができたのでよしとします。
ちなみに、すごいどうだっていいことですが、大学3年末にスカイウェイブを買ったので、実に14年半、スカイウェイブに乗ってます(途中250→400ccになりましたけども)そりゃ僕も年を取るわけだ。。。