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「『新月』- New World Order -」

舞台音響(プラン)

ポスター

公式HP

スタッフ、出演者はHPを参照ください。
主催:LOVE&ROCK
脚本,演出:原口勝
演出助手:佐藤秀幸
音楽監督:横山和俊
ミュージカルアドバイザー:角川裕明
ミュージカルアドバイザー助手:城田さおり
振付:宮本京佳
振付助手:西原杏佳
アクションコーディネーター:渥美博
舞台監督:吉川尚志
音響:iland.va
照明:原宏昌
美術:タフゴング
映像,配信:TWO FACE
宣伝美術:ロングランプランニング
制作:東京舞台製作
ヘアメイク:Queeva
会場:六行会ホール

<出演>
有馬芳彦
ダンドイ舞莉花
ラリソン彩華
鈴木凌平
西原杏佳
澄谷薫
一色絵里加
石野さやか
山田南実
前川大樹
円城寺正俊
末次寿樹
鮫嶋樹
佐藤秀幸
末野卓磨
清水宗史

林愛子
赤沼正一
松岡由美
桑原辰旺
賀集利樹
原口勝

- 音楽の神ミューサイ -
横山和俊(key)
岡崎達成(Dr)
大槻隆(Gt)
Sachi(Vn)

資料

仕込み図 システム図 回線図マルチ図

ざっくり解説

概要

概要
 ミュージカルって殆どやらないんですよね。。。なんて話していたはずなのに、お願いされた生楽器ロックミュージカル。4ピースバンド+10本超えのワイヤレスマイク!僕がやる仕事ではないのですが、縁あって受けることになりました。しかしながら、他の仕事もありますので、オペレーター2人+マイクケアの4人チームで進めて行くことになりました。よく考えたら、ここまで大きなチームでやるのは初めてです。コミュ障な僕としては大変なことでしたが、優しいみんなのおかげで無事に終わりました。
 内容は、一人の鬼が流れ着いた国で起こった、市民革命のお話と、運命に翻弄される鬼と、彼が愛した女の生まれ変わりの姫のお話で進んでいきます。国に抑圧されていた市民たちが無血革命を目指し、姫を人質に王に迫り、軍との戦い、主人公の加勢により見事革命が成功する、というストーリーです。軍隊に立ち向かい、市民たちが手をつなぎながら全員で叫ぶように歌う「RisingAction」は、すごい熱量でした。その熱量に負けないような音を観客にわたすために、かなーりの大音量が出るようなシステムになりました。後悔はしていない。
 バンドの横山さん、岡崎さん、大槻さん、Sachiさんにもとてもよくして頂きました。ありがとうございました。

サウンドプラン

卓周り

卓周り。オペさんには感謝です

 ワイヤレスが計14本、4ピースバンドの演奏で送るロック・ミュージカルです。殺陣あり、暴動あり、革命ありの大エネルギー芝居でした。となると、まーシステムは大変なことになります。僕が考えられる最大規模になりました。全員にはワイヤレスがついていないというところがポイントで、「オフマイク」+「オンマイク」+「楽器」+「効果音(PC)」が舞台上に存在します。大所帯を一人で処理するのは難しく、オペレートも二人体制になりました。「楽器PA+オフマイクオペ」と「マイクオペ+効果音音出し」という振り分けです。お二人には本当に良くしてもらい、かなり忙しいオペですが作品に寄り添ってオペをしてくれました。
 全体のサウンドプランについては、あくまで「ロック」ですので、サブロー+3WaySPをメインに、ライブサウンドが出るようなスピーカーを選んでいます。ロックかつきれいに、というミュージカルっぽい音になったと思います。その他の演劇の公演からすると、はるかに出力の大きいスピーカーを準備することになりましたが、結果としては作品と役者のエネルギーに負けることのない、公演にあった音になったのではないでしょうか。もうすこしおおきな現場になってもそのままのシステムになっているので、素晴らしい大音量になりました。
   楽器のPAについては、今回入ってくれたPAさんの力もあり、ちょいとしたライブと同じようなマイキングとPAをしてもらうことができました。具体的には、ドラム、ギター、キーボード、またPCでのバックトラック再生があり、それらにできるだけマイクを仕込んでPAしています。表の音と同じぐらい大事なのが各奏者さんへのモニターでそこについてもかなり細かく調整してもらいました。今回、奏者全員がイヤモニを装着しての演奏だったのですが、それに追加して、ウェッジモニターもおいて、そこから主に役者の声を出してフォローしました。あくまで芝居であり、奏者の方々も芝居を見ながら演奏をしているので、声をちゃんとモニターできる環境を作るのは大事です。また、ヴァイオリンのSachiさんは曲によってイヤモニを外して演奏したいということもあり、イヤモニとウェッジモニターで2つミックスを作っています。
 ワイヤレスは劇場のB帯デジタル、僕の持ち込みのB帯デジタル、2.4Ghzを使いました。2.4Ghzは無申請で多数使うことができて、今回のようなミュージカルでは助かります。運用するにあたり他セクションと2.4Ghzの使用を話し合い使わないようにしてもらい、またパワードアンテナを高めに設置することでトラブルは少なくなります。今回の公演でも卓の近くにアンテナを設置してもトラブルはほとんど起きませんでした。マイクはJTSのCX500を分解して、自作のヘッドセットに括り付けて使っています。マイク卓にはQL1を使用しています。今回の案件だと14本でしたので、フェーダーがギリギリ足りました。エフェクトはフェーダーの空きとの兼ね合いで2種類のみになりました。リバーブのショートとロングを準備しています。今回はミュージカルですので、薄めにかけています。
 SPの置き方は普段の芝居+モニターという形にしています。。奥SPとして802をバトンから吊り、メインSPはすこしディレイをとっています。サイドモニターは2列設置しています。今回2階で歌を歌う人が少なかったので、2階専用モニターは作っていませんが、舞台センターのSPは角度アダプタを使い、すこし上向きにしてあります。横幅が広い劇場ではないので、ちょい上向きサイドモニター+奥SPで十分モニター可能と判断しました。メインSPのディレイも802を合わせるというより、サイドモニターと合わせる感じでタイムを取っています。
 オフマイクについても普段の芝居と同様に設置しています。歌わない役者さんはマイクがついていないですが、オンマイク時の音量とのバランスをとるためにしっかり目に音を拾っています。小屋のプロセ、中通路のSPがしっかりしているため、音量を確保すること自体は問題なく役者さん達の熱量も相まって、しっかり芝居を後ろの席まで届けることができたかなと思います。

システムプラン

スピーカー

今回のスピーカー達。
ウーハーは横置き。

スピーカー

上空には802。

〇システム全体について
 生演奏+ミュージカルということで、小屋の規模に比べても大規模なシステムになっています。システム図を参照して頂ければわかると思いますが、接続などはDanteとAES50を使ったデジタル接続になっています。全体のシステムはQL1+RIO3224から出ていて、声を拾うマイクについてもRIOに接続しています。PA卓のM32Rと楽器周りのマイク、モニターは奥に置いたDL153に接続しています。各ミキサーのアウトについてもほぼすべて埋まっていて、今回のシステムの大きさを表しているようです。どうしてこうなった。
〇卓について
 上記していますが、システム&ワイヤレスマイク+効果音卓としてQL1、楽器PA+オフマイク卓としてM32Rを使っています。
 M32RのスロットカードにDanteカードDN32-DANTEを装着してQL1とDante接続をしています。また、効果音用のPCもM32Rのセカンダリーに接続しています。推奨しません(苦笑)。また、この効果音用PCで「R-Remote」というRIOのHA管理ソフトも動かしています。これはRIOをQLを通さずに管理出来て、HAの上げ下げを行えます。今回、オフマイクはRIO→M32にルーティングされていて、M32Rから直接RIOのHAを触ることができないのでこのような形を取りました。Dante便利。
 QL1にはワイヤレスマイクを14本アナログ接続してます。劇場のワイヤレスShure ULX-D×4、持ち込みのQLX-D×2、Line6 XD-V70×8を接続しています。またDante(M32経由)で効果音、客入れ用のPCを接続しています。音出しはAbleton Liveです。フェーダーの関係で、本番中に触るフェーダーは1本にしてあります。また本体のアナログアウトで劇場送りを6ch出しています。残りはRIO3224から出しています。エフェクトは内臓のX-Reverbをショートとロングでセットしてあります。基本的にはショートをうっすら、ソロなどのきれいな曲などはロングで色付けしています。今回の楽曲ですとM1「Prologue 新月」、主人公の伸介、リサが記憶と愛を取り戻すM12 「Asuka」あたりは長めのリバーブ曲ですね。
 QL1は16MIX+8マトリクスのアウトをコントロールできます。今回は収録送りも含めて15mix+8MTX使用しています。うち2outはモニター用chでM32RへDante接続で送っています。

ステージボックス+アンプ

ステージボックスとアンプ。
入力はバウンダリ、ガンマイクなどです

 M32Rは主にPA卓です。楽器のマイク16本、オフマイク9本が接続されています。また、楽器モニター送りのクリック、ワイヤレスマイクなども入っており、各奏者へ送られています。本来PA卓でオフマイクの調整はしないことのほうが多いのですが、今回はフェーダーが足りずお願いしています。
それで2個のミキサーはいっぱいいっぱいになってしまいました。大変。
 ステージボックスは下手袖にRIO3224、舞台奥にDL153を設置しています。RIOのほうはバウンダリーTM90Bを5本、ガンマイクを1階用2本、2階用3本を入力、各SPへの送りを出力しています。台の裏に設置してDL153には各楽器の入力、モニターの出力をしています。QL1だけだと出力が足りないので、M32Rをモニター用として使用したのは正解でした。また、M32RにDante接続したRIOからの入力については、HAのコントロールは上記の通りR-Remoteを使用しています。RIOのHAをM32Rから直接コントロールすることはできませんが、dimmer機能で少しであれば調整できるので本番中はそれで対応してもらう形にしました。本番中にオフマイクのHAをいじることはなかなかないので問題ありません。
〇スピーカーについて
 今回のメインSPはDZR315+DXS15LFにしました。必要な音量としてはDZR15でもよかったのですが、ガッツのある音が出したかったので一つ大きなものにしました。ローも置けることは、六月の案件の時に確認していました。今回それもありきれいにおけることができ、結果としてライブサウンドかと思えるほどの音を出すことができました。またインフィルにはDXR8を置きました。同じYamahaのシリーズなのでほぼ同じような音を届けることができたと思います。奥SPとして802をワイヤーで吊っています。安定の802ですね。直接飛ぶ音ではないですが、奥から響いてくれるのでいい音が出てくれます。
 今回はミュージカルですので、きっちりモニターできるようにモニターSPを立てました。メインSPのうしろにCBR10 、第一幕の後ろにCZR10をそれぞれスタンドにたてています。なお、CZR10のほうはK&Mの角度アダプタを付けてすこし角度をつけています。これにより、台上にも音が飛んでくれました。
アンプはyamaha PX5。EQプリセットが入っているので、舞台上下に置いて、1chCZR、2chCBRを選んで使っています。べんり。

楽器用ステージボックス+アンプ

楽器用ステージボックスとアンプ。

 各奏者へのモニターは、基本的にイヤモニを使用しています。これは前にできるだけ音を出さず芝居の邪魔をしないように、という配慮からの使用でした。今回も同じようにしてもらうことにしました。皆さんそれぞれ小型のミキサーを用意してくれていたので、そのミキサーに入力しました。それとは別に、声を返すためにウェッジモニターにTFM122Mを設置しています。芝居を聞きながら音を出すことも多く、前向いて声を出しているとさすがに聞こえにくいのでフォローのために設置しました。同軸2Wayのモニターで、普通にモニターとして使ってもきれいに出てくれるモニターです。アンプはLABGRUPPENのFP 10000Qです。素晴らしいパワーアンプです。っていうか、このアンプのほうが本来メイン用なはずです。。。豪華すぎ(笑 〇マイクについて
 ワイヤレスマイクについて。ワイヤレスは劇場のB帯デジタルShure ULXD×4、持ち込みにB帯デジタルShure QLX-D×2、2.4GhzワイヤレスLine6 XD-V75(一部70⃣)×8の計14本構成です。マイクはJTS CX500FHWのマイク部分を使い、ピアノ線で作った自作のヘッドセットと組み合わせています。エントリーモデルとしては音も良く、全員分をそろえるとなるとかなりの出費になってしまうので非常に助かっています。また、ShureとLine6はともにTF4端子での入力で、そろえることができるのも強みです。今回予備も含めて15波ともなると。。。(苦笑)
 電波について、劇場はパワードブースター+ホイップアンテナ、QLX-Dはホイップアンテナ、Line6はパワードアンテナP180を使って受信しました。卓とステージの距離は15mぐらいで、ほぼ問題なく受信することができました。ホイップアンテナはそのアンテナ同士が近いと干渉が起きがちで、特にLine6はそれが顕著です。ですので、アンテナディストリビューターを使ってアンテナをまとめて、さらにパワードアンテナを使うことでトラブルを少なくしました。また、他セクションと2.4Ghz帯の使用について話しておくことも大事だと思っています。(特に制作サイドとはインターネットやプリンターとの接続でつかうwifiの邪魔をしてしまうため、先に話しておく必要があります)
 オフマイクについては、舞台面にTM90B×5、後ろ向きや横向きのフォローにNTG2、台上フォローのためにバトンに吊ったAT8015×3です。今回の場合、マイクを付けていない人が半分のため、ほかの演劇と同様にきっちりと声を拾いました。歌の最中のバンドの音量もかなり強めになるため、バランスをとるためにきっちりを拾って声を届けました。この劇場には中通路にZX-1 が吊っており、客席後方のお客さんにも声を届けることができました。特に最終局面での台上での王様や騎士の声をお客さんに届けてハラハラしてもらわないとこのお話の構成がぼけてしまいます。とはいえ、役者さんたちの熱のこもった芝居は後ろの席まで届くぐらいの迫力でしたので、心配は全くありませんでしたね。

〇楽器のマイキングなど

DrとBassスペースKeyとVLスペース

演奏スペース。
下手と上手に分かれています

 下手から、ギター、ドラム、キーボード+PC、バイオリンの4ピース構成です。
 ギターはアンプを使わずに、PCでエフェクトおよびアンプシュミレーターをかけてオーディオインターフェイスから出力されています。そのオーディオインターフェイスからバランス出力をもらっています。
 ドラムは2タム構成でした。キックBeta91、スネア、TomにE904、ハイハット、オーバーヘッドにNT5をセットしました。回線に余裕がすくなく少し少な目です。が、タムとキックはきっちり拾うことができたのと、奏者さんの技術によりかなりの迫力でした。キックのマイクとして個人的にBeta91が好きなんですよねぇ。見た目が好きです。音も。
 キーボードはXLRアウトがついているものだったのでそのまま頂きました。また、バックトラックの再生をPCでされていたので、インターフェイスからアウトをもらっています。PCのアウトについて、バックトラック(ステレオ)、コーラス(ステレオ)、ベース、クリックを分けてもらっています。今回のシステムはメインのハイとローをミキサーで分けているため、ベースへのウーハーへの送りをコントロールできる方が便利です。ベースとキックはローをすこし強め、というのができています。クリックはドラム用と他の方用に別れており、各IEMにプリで送っています。
 バイオリンはSachiさんの持ち込んだバイオリンには先にピックアップが付いており、その音をもらいました。素晴らしい音に仕上がっていました。
 バンド台は上下に分かれているので、その連絡用にDrさんとKeyさんにSM58Sを渡しており、各イヤモニにつながっています。

感想など

 プランナー、スタッフが計4人というチーム体制で音響を担当したのは実は初めてでした。基本的に一人でやることのほうが多く、さらにコミュニケーションが苦手(特に人に連絡事項を伝えるというのが本当に苦手です)なプランナーでしたが、周りのおかげで無事に公演が終わることができました。本当にありがとうございました。
 また、生演奏でロック・ミュージカルというジャンル自体も初めてで、奏者の方々や役者へご迷惑をおかけした部分はありましたが、本当に良い形でお客さんに届けることができたと思っています。エンタメをやるのも見るのも、やっぱり楽しくて。コロナ禍でのエンタメを考える良い時間でした。見ていて最高にかっこいい世界を作る手伝いができたなら幸いです。