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「B→C バッハからコンテンポラリーへ 244 佐藤采香(ユーフォニアム)」

コンサートPA/録音

ポスター

公式HP

スタッフ、出演者はHPを参照ください。

主催:公益財団法人
  東京オペラシティ文化財団
<出演>
佐藤采香(ユーフォニアム)
清水初海(ピアノ)*
向井航
向井響

会場:東京オペラシティ
  リサイタルホール

<曲目>
・L.ブーランジェ:春の朝に *
・J.S.バッハ:パルティータ ニ短調 BWV1013
(原曲:無伴奏フルート・パルティータ イ短調)
・久保哲朗:ユーフォニアムの木
(2015〜21、佐藤采香委嘱作品、一部世界初演)*
・L.ブーランジェ:ピエ・イエズ *
・向井 航:Love is Love
(2022、佐藤采香委嘱作品、世界初演)
・J.S.バッハ:ソナタ 変ロ長調 BWV1035
(原曲:フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調)*
・N.ブーランジェ:祈り *
・N.ブーランジェ:路傍に *
・ヘルツキ:世の終末(1992/93)
・向井 響:ユーフォニアムとライブエレクトロニクスのための《美少女革命: Drama Queens》
(2022、佐藤采香委嘱作品、世界初演)

資料

東京公演資料

仕込み図_東京 回線図 回線図

高松公演資料

仕込み図_高松 高松公演_システム図 高松公演_回線図

ざっくり解説

概要

 絶対に僕じゃないだろ案件である、現代音楽コンサート。今回はユーフォニアム奏者の佐藤采香さんのソロコンサートです。いつも無茶振りお世話になってる向井響くん、航くん兄弟からのご紹介です。BtoCコンサートというのは、東京オペラシティ文化財団主催「バッハの作品と現代作品を軸とし、演奏家が自由にプログラムを組むことによって、さまざまな「B→C」を多くの方々にお聴きいただいております」とのこと。さらに年に1,2人だけ全国での公演(主に奏者の故郷とお聞きしてます)を組むというものです。ユーフォニアムの素晴らしい響きと、向井航くんのバックトラックと映像、響君のバックトラックとエフェクトを流すのが今回のメインミッション、またライブ録音についても担当しました。譜面もろくに読めない僕がやる仕事じゃない
 ユーフォニアムという楽器は存在は知っていましたが、PA、録音するのは初めてでした。いろいろな意味で不安が残る音響さんを采香さん、またオペラシティ担当の澤橋さん、各ホールのスタッフさん方が優しく迎えてくれたので、無事に公演を行う事ができました。ありがとうございました。
また、今回も横山斉実さんに大変お世話になりました。ありがとうございました。

 

サウンドプラン

全体図

オペラシティ全体図。
メインSP、割と大きめです。

全体図

高松公演。広さがかなり違います。

さてさて、今回はユーフォニアムのソロコンサートです。演奏会全体で言えば、PAする曲は向井航くんの曲と響くんの曲のみです。それ以外は録音です。
PAすると言いましたが、そもそもユーフォニアムは大きな音をだす楽器ですので、音量を補うという意味のPAは不要です。あくまで曲の演出として出す形です。

航くんの曲「Love is Love」は、映像を出しながら聞く曲です。ユーフォニアムはSPからも出しますが、あくまでバックトラックとのバランスのためのフォローという形です。また、リバーブとディレイ、またディストーションをかけた音を混ぜたいということで、ミキサーでエフェクトを掛けた音を混ぜました。PAプランはユーフォニアムの音の拡張です。また、航くんの曲ではクリックを聞きながらの演奏になりました。
対して響くんの曲「《美少女革命: Drama Queens》」はバックトラックだけではなく、響くんのPCにユーフォニアムの音を送り、エフェクトをPCでかけそれを生の音と混ぜて流したいということでした。ユーフォニアムの持っている音の強さとエフェクトをかけた音を混ぜて、「ユーフォニアム自体」の音を探る、というイメージです。大きな音を出せるユーフォニアムとSPとの対比も描きたかったのでしょう。こちらはユーフォニアムをPAや電子音楽をで表現するイメージで音を作っていきました。

 ユーフォニアムという楽器をPAするのは初めてでしたが、ユーフォニアムというのは結構大きな音が出る楽器です。そしてもう一つ、直接音をお客さんに届けない、という特徴があります。抱え込む形の大きめの管楽器で、その音の出口は奏者の右上に向かう形になります。ということは、お客さんが普段聞いている音は、奏者の上部に向いた音が反射板や劇場の壁にあたって劇場全体に広がった音ということになります。これは直接音ではなく間接音ということになります。 通常管楽器をPAするときにマイクを音の出口に向けます。今回もクリップでつけたマイクを使用しましたが、そのままの音をスピーカーから出すと、本来のユーフォニアムという楽器の音色とは違う音になってしまいます。
 では前から音を拾えばよいかというと、それも違うと思いました。それは、SPもその劇場の小屋鳴りの中で鳴らすことで楽器と同じように空間で響くものだからです。ユーフォニアムと小屋の響きを拾ってSPから出してしまうと、SPから出た後に小屋の響きを足してお客さんに届きます。となると楽器の音→ホール響き→マイクで拾う→SPから出る→ホール響き となります。これだとちょっと響きすぎですし、また、音が遅れて聞こえてしまうかもしれないと考えました。ですので、生の音をしっかり聞いて、その音の良いところを邪魔しないように音を作ってPAしていくというところを目指しました。また、スピーカーから出た音も「ホール自体の響き」によって響きを足されています。それも意識しながら音量、エフェクトなどの音を作っていきます。

 今回は東京と香川のツアー公演です。東京はオペラシティリサイタルホール、香川は穴吹学園ホールです。
この2つの最も大きな違いは、リサイタルホールは四角い箱型の空間、穴吹学園ホールは名前の通りホールです。リサイタルホールのほうもかなりしっかりとした音響設計がなされている空間ですが、それでも楽器の響き方はかなり変わってくると思います。ですので、同じ音を届けるのにこだわらず、その空間で良い音を届けられるように、と考えました。
。。。それでも大きなローボックスをもっていくのは変わりませんが(笑

 二人の曲のPAについて。
航くんの曲は映像とユーフォニアムとバックトラックです。ユーフォニアムの演奏がメインですので、ユーフォニアムの音にバランスを合わせつつ、バックトラックとユーフォニアムのPAの音を足していきました。また、低音が強めのトラックをもってきたのですが、ユーフォニアムの音域とは違うものでしたので、結構強めに出しました。
全体的な音量はそこまで大きくありません。これは、曲が第一部の最後で、休憩後にもう一度生のユーフォニアムの音を聞くためにお客さんに大きな音を渡しすぎるのを避けるというのもありました。。
 で、響くんの曲ですが、こちらはエフェクトあり、バックトラックもかなりテクノあり、低音ありということで、最終的にはちょいとしたライブハウスぐらい大きな音にしていきました。
ただ、上記の通り、ちゃんとユーフォニアムの音との共演(戦い?)ですので、最初は少し大きめ、一度落として、最後強め、という感じに来んでいます。最後の曲ですし、せっかくPAが入っている演奏会ですから、そういうものも感じて帰っていただこうと思いまして。
(響くんに大きすぎですかね?って言われたのは内緒。行ける行けるって割とスタッフみんなが言っていたのはもっと内緒)

 機材は基本的に共有しています。
自家用車で運ぶため、すこしだけ小さめにしてみましたが、それでもかなり荷物でした。

録音も担当しています。今回もPAしながら録音するので、M32のDanteカードを装着しPCで録音しました。
三点吊り、Ambientマイク、ピアノ、ユーフォニアム(PA曲のみ)にマイクを付けてマルチ録音しています。 

全体図

東京の卓周り。

全体図

フットモニター。マールサウンド製

全体図

高松のステージ。

全体図

PA卓。元気な人達(作曲家)

全体図

モニター周り。ミキサーはイヤモニ用

システムについて
1 東京公演 オペラシティリサイタルホールについて
オペラシティリサイタルホールは箱型ではありますが、音響設計がしっかりしており、とても良く響くホールです。
とはいえ、箱型で空間としてはホール型より狭くなるので音のエネルギーを感じやすいと思います。
機材については基本的に前回の染谷さんのペガサスコンサートのときと同じものを選んでいます。現状僕が使ってきた機材の中で安定してPA、録音ともにオペレートしやすいものだからというのもあります。

 メインSP、サブSPはYamaha CZR12+DXS15XLFを使いました。インフィルは同じくYAMAHA DXR8を置きました。
昨今のヤマハのSPは非常に使いやすく、いつも愛用しています。特に楽器のソロコンサートのときは使いやすいですね。
今回は移動のこともあり、すこしだけ小さいCZR12を選びました。アンプはyamaha PX8です。CZR12用のプリセットが入っているのでセッティングなどがかなり楽です。
インフィルのDXR8は、同じヤマハのSPなので繋がりがかなりいいですね。
ウーハーはDXS15。同じく移動を考えて15インチです。
フットモニターにはマールサウンドさんの8”のウェッジモニター20WSこの大きさなのに非常に良い音でなってくれるスピーカーです。お気に入り。

ミキサーはMIdas M32Rです。コンサートではいつもつかっていますが、本当にいい音ですね。


各マイクについて。
ユーフォニアムについてはAudio-technica ATM350Uをクリップで装着しました。普段采香さんがPro35を使っているとのことで、いつも使っているメーカーで合わせたほうが良いかなと思いセットしました。
ピアノについては、DPA4099をステレオでセットしています。マイクが見えないので演奏の邪魔をしないです。音も最高です。
録音用の三点吊りはUSM 69 i をお借りすることができました。後述しますが、香川のホールの方でも劇場においてあった、信頼が高いマイクです。XY方式、MS方式両方に対応するマイクで、今回はステレオで録音しました。
またAmbientマイクとして、ATM8015を2本ステレオで置いておきました。

航くん、響くんの曲についてはバックトラックを再生します。
航くんのPCにはpresonus Quantum2626を使いました。こちらはバックトラックとclickトラックの3本を出力しています。また、映像を同時に出力しています。ソフトはQlubを使用していて、映像と音声を同時に再生しています。
響くんのPCにはTC StudioKonnectを使っています。響くんの曲はユーフォニアムの音にエフェクトをPC内でかけるので、ユーフォニアムのプリ送りを入力しています。
アウトはバックトラックとユーフォニアムにエフェクトを書けた音です。生音の方はミキサーの音をそのまま出しました。接続がFireWireなのですが、大きな遅延も感じることなく出せていました。
ソフトはableton Live11を使用しています。 今回もかなりの大音圧で、リサイタルホールを揺らしてました(笑)今回も無事にリサイタルホールを冒涜できました

2 香川公演 穴吹学園ホールについて
オペラシティリサイタルホールとは違う、ホールらしい素晴らしい響きがするホールでした。箱型ではないので、SPのエネルギーがよい形で拡散します。
反射の音がほぼなかったので、東京で行ったような、ライブハウスのような低音を出すのは最初からやめました。ユーフォニアムが良い形で鳴っているので、それをそのまま大きくするイメージで音を作り、そこにバックトラックのローを足していきました。
結果として、東京公演とは全く違う音になったと思います。言葉で表すのは難しいのですが、東京はすこし暴力的な、荒々しい音であるとすれば、香川ではユーフォニアムの音を包み込むようなバックトラックの音になったと思います。

機材については東京都とほぼ同じです。なんと、録音用のUSM69も同じでした。びっくり。その信頼性の高さを伺えます。
Ambientマイクについては、客席後方の方においたので、劇場の響きを拾ってくれました。

最後に

初めてのユーフォニアムでしたが、なんとか終わりました。
これも采香さんはじめ、出演者、作曲家、スタッフの皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。

さておき。

写真 写真 写真 写真 写真写真 写真
自家用の車で行ったんですが、四国最高でした。
まず、以前から泊まってみたかった高速道路のSAにあるレストインに泊まりました。次の日、一日移動していたのですが、かなり久々の大塚美術館 !原寸大に再現された美術品に実際に触ることができるというすこし変わった美術館ですが、美術品の大きさが如何に重要かがわかります。公演が終わった次の日には高知まで言って、カツオ食べました。一泊して、アイスクリンを食べて桂浜で竜馬像をみて、神戸の方へ移動。怒涛の移動でしたが、最高の気分です。高知最高。
また行きたいなぁ。今度はバイクで行きたい。。。できればもっと長い期間。いつにしようか。。。(ブツブツ)